◆中野雅至『キャリア官僚の仕事力。知られざる実態と思考法』を読み解く
※要旨
・官僚の知的業務には、「書く」ことが深く関わっている。
政策の企画書、白書、予算書、報告書など、書く仕事がとにかく多い。
いずれも関連する膨大な量の資料、統計、文献などを頭にインプットし、
それに自分ならではの分析を加えた上でアウトプットしなくはならない。
・書くためには、「読む」という仕事が必要だ。
官僚は、とにかく大量の文書を読まなければいけない。
新聞や雑誌から学者の論文まで、自分の仕事に関するあらゆる参考文献を読み漁る。
関連する研究会の報告書、それに英語の文献も読んでおかなければならない。
・官僚には、瞬発力、相場観、危機察知力、リスクヘッジ力が必要。
官僚仕事と瞬発力。
一見、関連性が見いだせないかもしれないが、実は霞ヶ関では瞬発力が非常に求められる。
・フットワークの軽い者が評価される。
役所で仕事を進めるには関係者の合意形成が欠かせない。
関係者の合意を得ないままに強行突破することも可能だが、
そういうことをすると袋叩きに遭いかねないので、
合意を得てから仕事を進めるのが当たり前になっている。
・そのため、官僚は率先して関係者のもとに出向き、
自分たちの立場や進めようとしている政策などを説明する。
世間ではこれを「根回し」「ご説明」と揶揄するが、官僚としては必死だ。
実際、相手に納得してもらって仕事を進めるためなら、平気で頭を下げるし、ゴマもする。
・局長や事務次官といった幹部クラスは、どういう仕事をしているのだろうか。
彼らは課長補佐のような事務仕事はあまりしない。
事実、パソコンを一心不乱に打っている局長などあまり見たことがない。
人それぞれだが、だいたい朝9時半くらいに登庁して個室に入る。
そして、新聞を読んだり、資料を読んだりする者が多いようだ。
・霞ヶ関では、政治家相手の仕事を「マル政・案件」と呼ぶ。
マル政案件は処理を一つ間違うと、お縄を頂戴することにもなりかねないだけに、
あまりかかわりたくないものだが、局長はこういう仕事から逃れられない。
局長は、この手の仕事を日々さばかねばならない。
そのためには政治家を怒らせることなく、その要求をやんわり断るという技が求められる。
・政治家から電話がかかってきたその場で、
「その件はちょっと引き受けかねます」などと言うようでは局長失格。
「先生、なるほど、おっしゃる通りです。できるかどうか検討してみます。少しお時間をください」
とか言って、一週間くらい経ってから、
「申し訳ありませんが、やはり難しいようです。
ただし、別のやり方もあるらしいです。
資料をお持ちしますので、ぜひ説明させてください」などと言って、
相手を丸め込むのが能力のある局長の対応だ。
・「マル政・案件」の裁き方で、局長の出来不出来がわかる。
ポイントは3つだ。
1.人当たりのよさ。
意外なことかもしれないが、霞ヶ関の局長の多くは腰が低い。
2.腹の据わり。
どんな案件でも動じないことだ。
政治家に気を使いながらも、政治家を平気で騙せるようではないといけない。
3.危険な仕事をシュアする能力。
政治家の案件を自分一人だけでかぶると、何かと危険がつきまとう。
そのため、部下を仕事に巻き込むわけだ。
・かつての自民党政権時代、仕事を進めるためにはどんな案件でも、
自民党の部会の了承を得なければならなかった。
この部会の会議は昼飯時に開かれることが多いのだが、決まって出されるのが「カレーライス」だった。
腹の据わりが良いか悪いかは、このカレーライスの食べ方で大まかに分かる。
腹が据わっている局長は、たとえ数分後に自分が議員から吊るし上げられる可能性があるとしても、
気にとめることなくカレーライスを平らげる。
それに対して、小心者はカレーライスに手をつけることさえできず、ひたすら水を飲んだりする。
・些細なことでも把握しておきたい習性。
局長は局のトップだけに、部下から上がってくる案件に対して最終判断を求められる。
事務方の最終的な責任者は担当局長だ。
局長に逃げ場は無い。
・官僚仕事で象徴的なのが、国会答弁書の作成だ。
答弁書の作成のような「やっつけ仕事」は意外にセンスが求められる。
そのためやっつけ仕事をやらせれば、「できる人材」かどうかの判断がつく。
思い切りのよさ、作業の素早さなど、さまざまな力量が垣間見えるからだ。
また仕事の相場観を鍛える訓練にもなる。
・省庁間の交渉も難しい。
ただ担当者同士が合意しても、「経産省に負けるな」と難しい上司もいる。
強気な上司も納得する交渉のテクニックはポイントがある。
とにかく派手に交渉すること。
電話口で怒鳴ったりするのだ。
それに聞き耳を立てている上司は、「相当タフな交渉を仕掛けているな」と誤解する。
そのため、「課長、ここまでようやくこぎ着けました」と息急き切って駆けつけたりすると、
コロっと騙される。
・官僚は仕事体力に長けるだけでなく、意外と運動神経がよくてスポーツが得意な人も多い。
・官僚仕事はスケジュール観が肝。
締め切りあっての仕事。
優秀な官僚であれば部下にこう言う。
「仕事の出来不出来はこだわらないから、締め切りに余裕をもって報告してくれ。
おかしいと思えば、僕がきちんと直すから」。
こういう言葉を聞くと、部下は安心する。
・締め切りを守るポイントは、「逆算」にある。
・付箋とクリアホルダーとチューブファイル。
仕事のスケジュール管理のため、僕自身や周りの官僚たちがやっていたノウハウを紹介する。
仕事の締め切りを「短期」「中期」「長期」の3つに分ける。
短期の仕事とは、やっつけ仕事や何となく上司から頼まれたような仕事。
・雑用を馬鹿にすることなかれ。
若手官僚は雑用をそつなくこなすことが人事評価の分かれ目になる。
・中期の仕事は、締め切りが数週間から1ヶ月程度の仕事。
これがクリアフォルダーに資料を入れて管理する。
官僚仕事の多くは、文書で依頼が来る。
その文書には「締め切りは○月○日厳守」と必ず明記してある。
・長期の仕事は、締め切りが数ヶ月から年単位の仕事。
この管理は2つある。
1つは、厚手のチューブファイルで関連資料をまとめておく方法。
パソコンのファイル保存しておくこともできるが、紙媒体のほうが使い勝手がいい。
もう一つは、ノートで管理する方法。
古典的だがノートを使う官僚は多い。
1冊のノートとなると相当量のメモが書けるし、メモ用紙に走り書きするのと違ってなくしたりすることもない。
・法律案、予算案、税制改正の3つは、旧厚生省でスケジュールがマニュアル本としてまとめられていた。
この3つは毎年のスケジュールが大まかに決まっており、
どの組織でどういう了解を得なければいけないのかも大よそ決まっている。
・「書く」ために「読む」。
官僚は、法律案や白書など文章を書く仕事が多い。
まずは心構えからだ。
「仕事で必要なアウトプットのために、情報をインプットする」ということが基盤になる。
・官僚が読む文書には英文も多い。
国際会議に出席したり、他国との交渉事も多いので、英文の資料を短時間で読みこなすスキルも必須だ。
どうやって英文資料を読みこなすか。
ポイントは、律儀に全部読まないこと、何度か読み直すこと。
・官僚の仕事は、
1.情報をインプットする。
2.その情報を頭の中で分解する。
3.最終的にアウトプットする。
が基本。
・文書は、タイトルと目次で決まる。
・ヒアリングは貴重な情報源。
官僚は耳学問も得意だ。
わからないことがあれば聞く。
必要があれば、外部の学者や業界関係者にも積極的に聞きに行く。
そういうヒアリングが非常に大切なことをわかっているし、わからないまま悩むのは時間の無駄ということを熟知している。
・僕の経験からいうと、仕事に相場観のある人は間違いなく出世する。
相場観とは、仕事の段取りを着想する能力ともいえる。
「現状→問題点→課題→解決策」という一連の流れをごく短時間で思い浮かべる能力といってもいい。
・なぜ相場観のある人は出世するのか。
相場観の持ち主は、トラブルに遭っても冷静に判断できる。
それだけの腹の据わりがある証拠とも見なせる。
・人事異動をすると着任早々に仕事を把握することを求められるという、官僚の世界の掟も相場観の醸成に役立つ。
実際、厳しい上司に当たると、ほんの数日で「このポジションにきて一年くらい経っているような雰囲気をつくれ」などと告げられることがある。
・役所のカルチャーとして、仕事の丸投げが許されないというのも訓練になる。
「課長、○○という案件をどう処理すればいいでしょうか?」という受け身の指示待ち族では評価されない。
少なくとも「課長、○という案件については×という方向で処理したいと思いますが、よろしいでしょうか?」
という自分なりの解決策を示した上で、判断を仰ぐべきだ。
・アポ取りという仕事。
審議会のスケジュール調整をやらせれば、その官僚の力量がわかる。
委員の社会的地位に怯むことなく、どれだけ機敏で無難にスケジュール調整できるか、その力量が露呈する。
・最も重要になるのが、情報を扱う能力だ。
一定のポジション以上になると、情報にやたらと敏感になる。
それだけ考慮すべき利害が増えるためで、役所内でネットワークを張り巡らせることはもちろん、
役所外にまで足を延ばさないと貴重な情報は得られない。
・霞ヶ関や永田町近辺では、やたらと勉強会のようなものが開催されていて、そこに出席する官僚が多い。
課長補佐クラスになると、夜7時くらいに「これからちゃっと会合に行ってくる」と言いながら外出することが多くなる。
この種の勉強会には、政財官だけでなくマスコミ関係者や学者も参加しているため、貴重な情報が得られると評判だった。
※コメント
官僚の仕事力は、すばやく、量をこなせる。
彼らにうまく動いてもらうためには、政治家、そして最終的に我々国民にかかっている。
国民が今まで以上に勉強し、情報力を高め、官僚に発破をかければ、必ずこの国は良くなる。
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