◆ドナルド・トランプ『トランプ自伝:不動産王にビジネスを学ぶ』を読み解く
※要旨
・私は金のために取引をするわけではない。
金ならもう十分持っている。
一生かかっても使い切れないほどだ。
私は取引そのものに魅力を感じる。
キャンバスの上に美しい絵を描いたり、
素晴らしい詩を作ったりする人がいる。
しかし私にとっては取引が芸術だ。
私は取引をするのが好きだ。
それも大きければ大きいほどいい。
私はこれにスリルと喜びを感じる。
・私の取引のやり方は単純明快だ。
ねらいを高く定め、求めるものを手に入れるまで、
押して押して押しまくる。
・私は物事を大きく考えるのが好きだ。
子供のころからそうしてきた。
どうせ何か考えるなら、大きく考えたほうがいい。
私にとってはごく単純な理屈だ。
大抵の人は控えめに考える。
成功すること、決定を下すこと、勝つことを恐れるからだ。
これは私のような人間には、まことに都合がいい。
・大きく考えるためのカギは、あることに没頭することだ。
抑制のきく神経症といってもいい。
これは起業家として成功した人によく見られる特質だ。
彼らは何かにつかれたように、
何かにかりたてられるようにある目的に向かって進み、
時には異常とも思えるほどの執念を燃やす。
そしてそのエネルギーをすべて仕事に注ぎ込む。
・市場に対する勘の働く人と働かない人がいる。
たとえば、スティーブン・スピルバークはこの勘を持っている。
スルベスター・スタローンを批判するひともいるが、
彼の実績は認めるべきだ。
41歳という若さで、ロッキーとランボーという、
映画史上に残る偉大な人物像を2つも作りあげたのだから。
彼はいわば磨いていないダイヤモンド、
つまり勘がすべてという天才である。
彼は観客が何を望んでいるかを心得ており、それを提供する。
・私にもそのような勘がある、と自分では思っている。
だから複雑な計算をするアナリストはあまり雇わない。
最新技術によるマーケット・リサーチも信用しない。
私は自分で調査し、自分で結論を出す。
何かを決める前には、必ずいろいろな人の意見を聞くことにしている。
私にはこれはいわば反射的な反応のようなものだ。
・土地を買おうと思うときには、
その近くに住んでいる人々に学校、治安、商店のことなどを聞く。
知らない町へ行ってタクシーに乗ると、
必ず運転手に町のことを尋ねる。
根ほり葉掘りきいているうちに、何かがつかめてくる。
その時に決断を下すのだ。
・私は有名なコンサルティング会社より自己流の調査によって、
はるかに多くのことを学んできた。
・マスコミについて私が学んだのは、
彼らはいつも記事に飢えており、
センセーショナルな話ほど受けるということだ。
トランプ・タワーのような不動産プロジェクトの宣伝がある。
そのような宣伝の最後の仕上げは、ハッタリである。
人びとの夢をかき立てるのだ。
人は自分では大きく考えないかもしれないが、
大きく考える人を見ると興奮する。
だからある程度の誇張は望ましい。
これ以上大きく、豪華で、素晴らしいものはない、
と人びとは思いたいのだ。
・私の父、フレッド・トランプは、小さい頃から地元の果物屋の配達から靴磨き、
建設現場での木材の運搬など、
ありとあらゆる半端仕事を引き受けるようになった。
彼は建築に興味を持ち続け、高校生のとき、
夜学に通って大工仕事と図面の見方、見積を学んだ。
建築のことを学んでおけば、いつでも生計を立てられると思ったのだ。
・私は幼い頃から、近所のガキ大将だった。
人から好かれるか、非常に嫌われるかのどちらかで、
これは今も変わっていない。
けれども仲間内では大いに人気があり、
みなのリーダー格になることが多かった。
・私はヨチヨチ歩きができるようになった頃から、
父と建築現場へ出かけていった。
10代のころは、休暇で学校から帰省すると父のあとをついてまわり、
商売のことをつぶさに学んだ。
業者との交渉、現場めぐり、
新たな建設用地を手に入れるための交渉など。
・私は1964年にニューヨーク・ミリタリー・アカデミーを
そつぎょうすると、フォーダム大学に2年いった。
その後、ペンシルベニア大学の大学院ウォートン・スクールに入った。
ビジネススクールであった。
・ウォートンで学んだ一番重要なことは、
学業成績にあまり感動してはいけないということだろう。
ウォートンで得たもう一つの重要なものは、
ウォートンの学位だった。
私にいわせればそんな学位は何の証明にもならない。
だが仕事をする相手の多くは、これをいたく尊重する。
この学位は非常に権威あるものと思われているのだ。
というわけで、あらゆることを考えあわせると、
やはりウォートンへ行ってよかったと思っている。
・父と一緒に最初働いたが、やがて自分の道を歩き出した。
・父が建設途中のトランプタワーの現場を見に来たときのことは、
いまだに覚えている。
父はひと目見るなり、私に言った。
「こんな高価なガラス壁を使うことないじゃないか。
4、5階までこれを使って、あとは普通のレンガを使ったらどうだ。
どうせ上を見上げる者なんかいないよ」
これはまさにフレッド・トランプ的発想だった。
私は父の倹約精神に心を打たれたし、
もちろん父の気持ちもよくわかった。
だが同時に、なぜ自分が父のもとを離れたかという理由も、
はっきり認識した。
・父の商売を継ぎたくなかった本当の理由は、
私にはもっと遠大な夢とビジョンがあったからだ。
これは父の仕事が肉体的にも経済的にも厳しかったという事実より、
はるかに重要だった。
・考えてみると、私のショーマン的な性格は、
母から受け継いだもののように思う。
母はドラマチックで壮大なことが好きだった。
ごく平凡な主婦だったが、自分を越えた大きな世界観ももっていた。
エリザベス女王の戴冠式のとき、
スコットランド人である母はそれを見るために、
テレビの前に釘付けになり、一日中動かなかったことを覚えている。
・母は式の壮麗さと王室の華やかな雰囲気にただ心を奪われていたのだ。
・その日の父のこともやはり記憶に残っている。
父はイライラと歩き回り、母に言った。
「メアリ、いい加減にしてくれ。
もうたくさんだ。消しなさい。
あんなものニセ芸術家の集まりじゃないか」
母は顔も上げなかった。
この点で2人はまったく対照的だった。
母は華やかさと壮大さを好む。
だが父はきわめて現実的で、
能力や効率の良さにしか心を動かされないのだ。
・大事な取引をする場合は、
トップを相手にしなければラチがあかない。
その理由は、企業ではトップでない者はみな、
ただの従業員にすぎないからだ。
※コメント
トランプのもの凄いパワーを感じる。
同時に彼は、ビジネス成功のために細心の準備をしているようだ。
大胆さと緻密さが、彼のビックプロジェクトを推し進めている。
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