●今、なぜスパイ・ゾルゲなのか


ゾルゲは、戦前、日本の最高機密をたびたび入手した世紀のスパイである。
日本人として、悔しい出来事である。
しかし、彼の手法は、インテリジェンスの分野でとても参考になるので取り上げてみたい。


リヒャルト・ゾルゲは、ソ連のスパイである。
彼は、ドイツ人の新聞記者になりすまし、第二次大戦前の日本で確度の高い情報を入手、分析した。
「ドイツのソ連侵攻」「日本のソ連侵攻なし」という情報を掴んだことは大きい。




●スパイ・ゾルゲに学ぶ戦略的な情報入手・予測・分析報告のノウハウ


・少年時代は、歴史、文学、哲学、政治についての成績は優秀だった。
他の科目は、からっきしダメであった。
無口な少年だった。
歴史で好きだった分野は、フランス革命、ナポレオン戦争、ビスマルク時代だった。


・ゾルゲは、学問を志向するところが強くあった。


・コミンテルンの情報部で、ドイツの状況、経済、政治、外交の専門家として、分析研究を次々と報告。


・理論研究だけではなく、各国の党と連絡をとり、しばしば現場の状況を実施調査した。


・日本が北進してシベリアへの侵略を目指すのか、南進するのか、モスクワにとって最重要となる情報を入手する必要があった。
そのため、日本問題に真剣に取り組むこととなる。


・ゾルゲは、日本研究のために、日本の歴史や外交政策を徹底的に勉強した。


・ゾルゲは、単に情報を取るだけのスパイではなく、情報を分析し判断することを重視した。


・ゾルゲは、日本や中国の習慣、歴史、風習をよく知ることで情報に評価を下したり、戦略的な予測・分析報告を行うことができた。


(参考文献:下斗米伸夫・NHK取材班『国際スパイ ゾルゲの真実』角川書店)


●ゾルゲのスパイ活動とゾルゲ事件



1895年、ドイツ人の父とロシア人の母の間に生まれた。
1914年10月に、第一次世界大戦にドイツ陸軍に志願。
負傷し入院中に社会主義思想を知る。


1919年にハンブルク大学で最優秀の評価を得て、政治学の博士号を取り、ドイツ共産党に入党。


1924年には党活動が評価され、コミンテルン本部にスカウトされ、モスクワへ赴く。
さらに軍事諜報部門である労農赤軍参謀本部第4局に配属された。



1933年9月6日、日本やドイツの動きを探るために「フランクフルター・ツァイトゥング」紙の東京特派員として日本に赴き、横浜に居を構える。


上海時代に知り合った近衛文麿内閣のブレーントラストで、尾崎秀実を中心メンバーとするスパイ網を日本国内に構築し、スパイ活動を開始する。


当時日本におけるドイツ人社会で、日本通かつナチ党員として知られるようになっていた。


ゾルゲは、駐日ドイツ特命全権大使のオイゲン・オットの信頼を勝ち取り、第二次世界大戦の開戦前には最終的に大使の私的顧問の地位を得た。


大使の私的顧問として大使親展の機密情報に近づき易い立場を利用して、ドイツの「ソ連侵攻作戦」の正確な開始日時を事前にモスクワに報告した。


しかし、スターリンは、ヨーロッパ各国のスパイからの開戦近しの情報同様にゾルゲ情報を無視、結果ソ連は緒戦で大敗し、モスクワまで数十キロに迫られた。


近衛内閣のブレーンで政権中枢や軍内部に情報網を持つ尾崎は、日本軍の矛先が対ソ参戦に向かうのか、仏領インドシナなどの南方へ向かうのかを探った。


日本軍部は、独ソ戦開戦に先立つ1941年4月30日に日ソ中立条約が締結されていた上、南方資源確保の意味もあってソ連への侵攻には消極的であった。


1941年9月6日の御前会議でイギリスやオランダやアメリカが支配する南方へ向かう「帝国国策遂行要領」を決定した。


この情報を尾崎を介して入手することができ、それを10月4日にソ連本国へ打電した。


その結果、ソ連は日本軍の攻撃に対処するためにソ満国境に配備した冬季装備の充実した精鋭部隊をヨーロッパ方面へ移動させた。
そして、モスクワ前面の攻防戦でドイツ軍を押し返すことに成功し、最終的に1945年5月に独ソ戦に勝利する。


太平洋戦争開戦直前の1941年10月に、ゾルゲや尾崎らのグループはスパイ容疑で警視庁特高一課と同外事課によって一斉に逮捕された(ゾルゲ事件)。


旧ソ連の駐日特命全権大使が日本へ赴任した際には、東京の多磨霊園にあるゾルゲの墓へお参りをするのが慣行となっていた。
ソ連崩壊後もロシア駐日大使がこれを踏襲している。

(引用:Wikipedia)



●コメント

ゾルゲの部屋には、『古事記』など多くの日本の古い文献があったという。
学者肌であったゾルゲは、CIAなどにいる博士号を持った分析官たちと共通したところが見える。
できる限り本を読み、基礎研究を行ったからこそ、多くの機密情報を獲得に繋がったのであろう。
改めて、学生時代にもっと勉強しとけばよかったと思う今日この頃である。
それと同時に、生涯勉強であると強くゾルゲから学んだ。


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