◆小峯隆生『海上保安庁・特殊部隊SST』を読み解く


※要旨


・海上保安庁には、「特殊警備隊SST」と呼ばれる特殊部隊が存在する。

海上テロ、シージャック、銃火器を用いた海上犯罪、海賊への警戒任務など特に困難な事案に対処する部隊である。
その特殊性のため、機密度が高く、謎が多い。


・海上保安庁は、陸の警察と消防が合体したような組織で、その任務は日本の海上の安全と治安を守ることである。
具体的には、海難救助、海上交通の確保、海上火災から、密輸や密航、海賊の取り締まりまで、その任務は幅広い。
最近では、テロ対策や海上権益の確保など、国際問題に直結する任務が重要視されている。
こうした多様な任務を遂行するため、海上保安庁は巡視船など約510隻、航空機70機を全国に配備している。
職員も1万2000人を数え、世界有数の海上保安機関と言える。

その海上保安庁内に、まったく謎に包まれた部隊が存在することを知っている人は少ない。


・SSTの元関係者は、こう証言する。

「SSTの創設当初は警察、自衛隊、民間関係者から様々教わりお世話になったが、
アメリカ海軍特殊部隊シールズ(SEALs)に教わった瞬間から、すべてが変わりました。
やはり、本物は凄い。目からウロコが落ちました。
やはり民間の方は本物のテクニックに触れることはできない。
我々は本物に学ぶことだけに専念するようになりました」

・シールズ隊員から、こう言われたという。
「ここで、君たちに教えたことを他言してはならない。
我々が教えた理由は、君たちが特殊部隊の仲間だからだ」

テロ対策の最新テクニックは秘伝中の秘伝である。


・「勇気ある撤退。出動したら、必ず全員で帰って来よう」
それがSSTの合言葉。
そして、それこそがSSTが最強の海の特殊部隊である証なのだ。

ちなみに標語は『常に備えよ』。


・SSTのルーツは、1985年。
最初の部隊名は『海警隊』。関西国際空港を警備するために生まれた部隊だった。
最初の兵力は、8名である。


・その後、SSTの中で、増員された16名は「2期生」と呼ばれている。
元自衛官や、剣道、柔道、射撃の達人であったり、捜査能力、操船能力、情報収集能力に長けた人々。
ちなみに海上保安官は、遠泳は当たり前。
学生時代に8キロ泳げないといけない。


・設立当初、教科書が無かったので、教官は、
「映画『ファイナル・オプション』のようなことが実際起きたら、どうする?」
などと、質問していた。
『ファイナル・オプション』は、1980年ロンドンで発生したイラン大使館占拠事件で、
英国特殊部隊SASが出動した作品だ。
1982年当時、あまりのリアルさに公開中止に追い込まれた伝説の映画だ。


・その後、情報収集のため、冒険小説を読んだり、銃の専門誌を熟読した。
また実際に起きた事件を研究するため、隊員たちは、休日に図書館に集結し、
過去に起こったシージャック事件、人質事件を徹底的に調べた。


・1991年、笹川良一氏の日本船舶振興会が資金援助し、シールズの教官を日本に呼ぶことに成功した。
当時の海上保安庁は、そのための予算がなかった。
シールズ(SEALs)は、Sea(海)、Air(空)、Land(陸)の頭文字をとってそう呼ばれる。
「どこでも特殊作戦が可能」という意味だ。
1962年に設立され、ベトナム戦争、湾岸戦争、アフガン戦争、イラク戦争でも活躍した。
そこから11名の精鋭が、指導に訪れたのだ。
海警隊はシールズの指導によって大きく飛躍する。
間違った者に教わると、現場の部隊は10年進歩が遅れる。

その後、訓練、実戦を経て、1996年、SST(特殊警備隊)として正式に発足する。


・リペリング技術は世界一。
要請があれば断らないのがSSTの主義だ。
シールズは、敵対する大型船舶や軍艦への乗り込み(ボーディング)は得意。
だが、小型船舶、ボートへのボーディングは嫌がる。
今や、その技術は世界一。
SSTはこれまでに密航船へのリペリング降下やボーディングを100回以上こなしている。


・海上保安庁特殊警備隊SST。
その隊員たちの存在は、一般の人々に知られることはない。
そのため賞賛されることも、労をねぎらわれることもない。
しかしSST隊員たちは、日本人の生命と財産を守り続ける。それが任務だからだ。
事案ゼロ・・・それは「形」に残らないが、警備行動としては、それこそが任務の理想形であり、成功を意味する。


SSTの現在については、ここで語ることはできない。
なぜなら米海軍特殊部隊の教官が告げたように、特殊部隊が「今の状態」を公表することは、すなわち敗北を意味するからだ。
ただ一つ言えることは、今日も、今この瞬間も、彼らは基地に、そして日本のどこかで待機している。


※コメント
広くは知られていないが、このような部隊が存在することを心に留め置きたい。
そして、日本の島を守るため、名も無きサムライたちが戦っていることをニュースが出るたびに思い起こしたい。
多くの日本人が知らない中、このメルマガの読者の皆さんだけは、
南方の荒波で戦う彼らに思いを寄せようではありませんか。


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