◆エドワード・ルトワック『自滅する中国:なぜ世界帝国になれないのか』を読み解く
(奥山真司氏・監訳)


※要旨


・戦略は「常識」とは違う。
それは逆説的な論理を持っており、直接的な行動を皮肉的・矛盾的な結果によって罰することになるのだ。
したがって中国がその台頭する力を周辺国に対する領有権の主張という形で表現すると、
それが敵対的な反応を発生させることになる。
そして、影響力(ソフトパワー)を破壊することによって全体のパワーを減少させることになる。


・現在の中国問題について、私は「中国の専門家」ではなく、
一人の「戦略家」としてアプローチしている。
その理由は、戦略の普遍的な論理はあらゆる文化とあらゆる時代に完全に平等な形で適用できるからだ。


・本書は2010年にアメリカ国防総省の相対評価局長のアンドリュー・マーシャルによって、
要請された調査の一環として始められたものだ。
彼と長年にわたって何度か一緒に仕事をできたことは名誉であった。
なぜならアンドリュー・マーシャルの戦略思想家としての才能は、
その長期にわたる局長としての仕事のおかげで伝説化しているからだ。


・中国の昔のやり方の名残りの中で最も印象的なものの一つは、
中国の官界が外国の賓客に漏れなく与える歓迎の仕方だ。
こうした賓客には、世界中から来た政府首脳や国家元首、閣僚のような様々な重要人物がおり、
中には弱小国からの賓客もいる。


・そこで交わされる会話は単なる社交辞令くらいでしかないのだ。
ところが実際にビジネス的な会話がなくても、賓客たちは満足して帰ることになる。
なぜなら絶え間ない儀礼と丹念にもてなされる食事会が続くからだ。
アメリカ国務省では、数時間にわたる会議でも、普通出てくるには薄いコーヒーで、
食事はなにも付いてこない。
これは反米主義をさらに強めてしまうだけだ。


・かつてのドイツの戦略面での無能さは、国家の破滅的な失敗を引き起こす必須条件であった。
これは傲慢さから始まったのであり、
当時の多くのドイツ人たちは、現在の多くの中国人と同様に、
自分たちの急速な台頭のおかげで自制心が利かなくなっていたのだ。


・中国の台頭する力は必然的に他国の抵抗を増加させることになり、
それがゆえに大戦略レベルではどんどん不利になっていくのだ。
これは中国の軍事力が増加するからであり、
戦略の世界では日常的に発生する逆説的な結果なのだ。


・戦略が政治よりも強いことは、古今東西変わりがない。
そして戦略は、貿易や通商よりも強い。


・中国は北朝鮮への経済支援も継続している。
この経済支援は、おそらく北朝鮮の体制の生き残りという意味では不可欠なものだ。
この体制が本当に必要とするものは、エリート層の団結を保つためのまともなレベルの食料と一般消費財だ。
中国は金の使い方をよく心得ているように見える。
なぜならこうすることで、北朝鮮を確実に鎖につないでおけるからだ。


・中国の戦略の失敗は、東アジア全体やそれ以遠にもアメリカの影響力が拡大していることによって明確にわかる。
とりわけフィリピや日本との間では、アメリカとの中断・後退していた同盟関係が復活している。


・アメリカとインドとの間の戦略的協力は、進みが遅く、困難で衝突もあるのだが、
それでも絶え間なく前進している理由は、結局のところは、「中国の軍事力の増大」と、
その「脅威を感じさせる行動」にあるのだ。


・本書の内容を理解する上で重要なキーワードが「勝利による敗北」である。
これは勝ち続けることによって相手の反動を呼び起こしてしまい、
その結果として敗北を迎えることになるという逆説的論理である。


・ルトワックは、経済、軍事、政治などの分野における現在の中国の台頭は、
すでに他国が我慢できるレベルを超えてしまい、
戦略の領域における逆説的論理を作動させてしまったと強調している。


※コメント
中国に関する文献は、このところ多数、出版されている。
そのようななか、戦略家、歴史家、経済学者、国防アドバイザーという複数の顔を持つルトワックの分析は、秀逸だ。
今後、中国問題を語る上で、重要な一冊になるであろう。



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