◆奥山清行『伝統の逆襲:日本の技が世界ブランドになる日』を読み解く


※要旨


・私がカーデザインを担当したフェラーリは、
モデナというイタリアの一地方都市にある従業員3000人の中小企業だ。
つまり地場産業である。
だが、フェラーリはフェラーリとして世界に名だたるブランドでありつづける。


・私は、アメリカとヨーロッパ、そして日本の「ものづくり」の現場で、デザインの責任者を務めてきた。
「デザイン」と字面だけを追えば、色と形を決めるスタイリストのことだと思う人もいるかもしれないが、
それは大いなる誤解である。
本来、デザインとは「もの」自体のコンセプトを立案し、開発からマーケティングまで、
全体の枠作りをすべき仕事なのである。


・デザイナーという仕事を、一匹狼の感覚でしていれば自由業に近いと思う人もいるかもしれないが、
これはまったく違う。
私はよく「デザインの3分の2はコミュニケーションである」と言っているのだが、
未来の消費者と、「ものづくり」をする人の橋渡しをする大きな役割があり、
そのために「ものづくり」の現場では自分の部下たちや職人と徹底的に意思の疎通を図る。


・デザインのようなクリエイティブな要素は、結局、個人の頭の中から出てくるもので、
集団で議論してつくるものではない。
日本では、組織や会社で動くことが当たり前とされているけれども、
個人を重視するイタリアは、ひとりの人間に徹底して強い権限を与えている。


・私がイタリアに来てから痛感したのは、ヨーロッパにおけるイギリスの絶対な存在感である。
教育にしてもファッションにしても、イタリア人のイギリスに対するコンプレックスはかなり強い。
たとえばイタリアの上流階級の家庭は、ほとんどが子女をイギリスに留学させる。


・日本人のアイディンティティについて、あるいは日本人は何なのかと考えていくと、
次の2つがある。

1.ひとつは「想像力」。「思いやり」と言い換えてもよい。
日本人というのは想像力に長けた民族だといえる。

2.もうひとつは「犠牲心」だ。
私は「自己犠牲」と呼んでいるが、自分をある程度犠牲にしてでも全体を生かそうとする気持ちのことである。


・平時のビジネスの場面で、全体のために自分を犠牲にする気持ちを持てるのは日本人だけなのだ。
中国や韓国をはじめとするアジア諸国にもまず見られないし、もちろんアメリカやイタリアにはまったくない。


・「自己犠牲」の考え方を「ものづくり」の場に置き換えてみると、
「切り捨ての文化」に帰着する。
必要のない部分を切り捨て、シンプルにしていく。
けれどもコアななるものだけは残そうとする。


・剣道や柔道、弓道など、日本の伝統的な武道では、稽古の前後に道場の掃除を行う。
茶道や華道などでも同様だ。
不要なものを片付けて、凛とした空間をつくっておくことは、
単なる作業ではなく、修行の一環である。
禅寺においては、調理や食事、掃除をはじめ、
さまざまな日常行為がすべて大切な修行であるとされてきた。


・論理では考えても解答の出ない禅問答は世界に類を見ない、
非常にレベルの高い遊びとも言えるだろう。


・イタリアの中小企業群、その強さの秘密。
どんな斬新な製品をつくっても類似品が出てくれば価格競争になる。
そのため、圧倒的な競争力を持つのは、その製品のアイディンティティなのである。
そのことが、まず大前提としてわかっているから、いたずらに規模拡大を目指さず、
特定の顧客や層を狙って製品を差別化するのだ。


・山形カロッツェリア研究会を続けてみて、職人のポテンシャルの高さがあらためてよくわかった。
その一方で課題も見つかった。
販売と統一戦略である。
山形に限らず、日本のものづくりの弱点は、販売に戦略性や実行力が乏しいところだ。


・ものづくりにおいて、手作業から生まれる感覚は非常に大切だ。
「手を使う」ことは人間の原点に返ることであり、手から生まれた線や形は、
製品になってもざっくりと力強い風合いを持つのである。


・イタリアの「ものづくり」は強いアイデンティティを持ち、独自のブランディングを追求している。
なぜ彼らがそうした独自性を重要視するのかといえば、
同じような商品が並ぶことで価格競争に陥るのを避けたいからだ。


・真のブランディングとは「この製品なら、いくらお金を払っても、周りがなんと言おうと自分は買う」
と、顧客に納得させることである。
顧客にとっての主観的な価値で価格は決まる。


・フェラーリの顧客になろうという人の多くは、
フェラーリのスポーツカーを買うことで、フェラーリの過去を、
その神話性を買おうとするのである。


・国際化の中でこそ、伝統文化の素養が求められる。


※コメント
日本が今後世界で輝くためには、デザインやブランドがキーワードになるだろう。
そのあたりのセンスを磨くためには、日々の心がけがモノを言う。
視野を広げて、目配りしたい。


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