◆菊池正史『官房長官を見れば政権の実力がわかる』を読み解く


菊池氏は、日本テレビの政治部記者。
官邸キャップや政治部デスクなどを歴任。


※要旨


・不測の事態に対応するための危機管理は、時の政府にとって、瞬発力、決断力、
胆力など総合的な能力が求められる。
最重要課題だ。
その緊急事態にどう対応するか。
政府の方針を国民に説明するのが、「危機管理の司令塔」とも呼ばれる内閣官房長官だ。


・大方針を示して人心をまとめていくのはトップリーダーである内閣総理大臣の使命だ。
そして、その大方針に基づいて、関係各所を調整し、状況を国民に説明し、
成果につながる環境をつくりあげていくのが内閣官房長官の仕事である。


・政治とは、リーダーが示した大方針の具体化であり、取捨選択や調整の過程である。
マネジメントの実績が、時の政権の命運にもつながる。
したがって、生の政治とは官房長官を中心に展開されるマネジメントの連続であり、蓄積なのだ。


・「舞台回し」。
ある日、私が官房長官に就任した菅義偉にその役割を尋ねると、こんな答えが返ってきた。


・菅は1996年に初当選し、その当時、官房長官だった梶山静六を政治の師と仰ぐ。
梶山は菅につねづねこう語った。
「官僚は説明の天才であるから、政治家はすぐ丸め込まれる。
おまえには、俺が学者、経済人、マスコミを紹介してやる。
その人たちからの意見を聞いた上で、官僚の説明を聞き、自分で判断できるようにしろ」


・菅義偉は、さまざまな派閥を歩き渡り、生き残りをかけた駆け引きや、
政治的な闘争を身をもって経験しながら、成果を生み出すための判断力、決断力、
総合的な意味でのマネジメント能力を身につけた。


・梶山静六は、国会対策委員長を2回経験したこともあり、野党との人間関係を重視し、
水面下交渉では人間味あるさばきを見せた。
「私が国対委員長のときは、野党の議員と1日1人会う。
酒は一升飲む。
12時前には帰らない。
こうすれば人間関係ができるんです。
大事なのは、人間関係です」

酒を飲みながら、梶山は茨城訛りで私にこう話したことがある。


・小泉政権の官房長官である福田康夫は、記者懇親で、しゃべらない。
漏らさない。
みずからのマネジメントについて自慢話をしない。
たいていの政治家は、「私が進言した」「私が指示した」と実績をアピールする。
福田は情報統制を徹底した。


・福田は「影」として「秘密主義」を徹底した。
そしてこの秘密主義も、じつは小泉自身の政治手法の一つだった。


・小泉以前、閣僚人事とは必ず派閥領袖などから漏れるものだった。
メディアがほとんど正確な閣僚人事を流していた。
派閥領袖たちは、トップである総理と情報を共有し、マスコミにもリークして存在感を高め、
裏権力を確立していたのだ。
小泉純一郎は絶対にそれを許さなかった。


・小泉政権のとき、閣僚として総理官邸に呼び込まれた本人も、いいわたされるまで、
どこの大臣かわからなかったほどだ。
情報の徹底した管理、独占こそが、小泉のリーダーシップを支えていたことは間違いない。


・政治におけるマネジメントは、理屈や綺麗ごとだけでは進まない。
ときには誠実に、ときには虚勢を張り、脅し、すかし、なだめ、実を取る。
その過程では、清濁併せ呑む胆力が求められる。
そして何よりもトップとの信頼関係が重要だ。


・官房長官の「調整」という仕事は、外からは目に見えにくい。
また、見えてしまったら「調整」「根回し」にならない。


・マネジメントを担当する官房長官の仕事には、3つの方向性があることを確認したい。
トップである総理大臣の大方針を、下へ広く徹底させるという意味では「下の方向」。
関係部署と横の調整を進める点で「横の方向」。
そして、総理大臣の考え方が間違っていると思ったときは、
身を挺してでも諌めるという「上の方向」だ。


※コメント
官房長官のところには国内外の機密情報が集まる。
その情報の価値を分かる人が、その役目を担える。
どの分野でもそうした裏方、調整役がプロジェクトを前に進める。


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