◆猪瀬直樹『空気と戦争』を読み解く


猪瀬氏は2020年東京オリンピック招致を成功させた。
彼は、インタビューで自著「昭和16年夏の敗戦」を例にとり、発言している。
今まで日本はあらゆるところで縦割りであった。
昭和16年の開戦前も陸軍と海軍でそれぞれ石油を備蓄し、互いの量を教えなかった。
そのため、昭和16年に敗戦が決まったのではないか。
しかし、今回のオリンピック招致活動は、中枢が機能し、あらゆる組織が連携できたのではないか、
との趣旨を述べていた。


※要旨


・人との出会いは不思議である。
たまたま未知の人物を訪ねると、そこに一枚、歴史を開く扉があった。
きっとそんな扉が無数に存在するのだろう。

たったひとつの数字、あるいはひとつの決断が世界を変える、と僕は知った。
1997年に小泉純一郎という代議士に出会った。
その人物が総理大臣になると予想した者は皆無だった。

運命とは、ほんとうにわからないものだ。
その後、道路公団民営化に関わった。

2006年9月、官邸執務室で、5年半の任期を終え、退任直前の小泉総理は、感慨深げに言った。

「道路公団民営化がほんとうにできるとは思わなかった」



・日米開戦の1941年、高橋健夫さんは、当時26歳で陸軍の技術将校だった。

彼は、その当時、戦争せざるを得ない空気が作られていった、との趣旨を話している。

高橋さんは、1935年、東京帝国大学工学部応用化学科に入学。
最先端の燃料に関する仕事を望んでいた。

最初、商工省燃料研究所に入る。
すぐに、徴兵され新兵教育を受け、その後、幹部候補生試験に合格。
陸軍工科学校にて、短期間の指導を受け、士官となる。

そして、陸軍航空技術研究所を経て、陸軍省整備局資源課(陸軍の燃料を担当)に引き抜かれた。
上司からまず「物資動員計画(極秘)」を勉強せよ、といわれた。

これは、あらゆる物資の供給量とそれをいかに陸軍、海軍、民需に配分するかという数字が、整然と配列されている。
高橋中尉は数字の魔力に眩惑を感じた。
羅列された数字を手にすることによって、なんとなく日本の物的国力を完全に自分の手に掌握したような気分にさえなった。



・高橋中尉は、日々、日本の石油備蓄と消費の関係を集計していくうちに、あきらかに燃料不足であることに気づいていた。
そのため、南方進出・蘭印占領を想定していたが、なかなかそれを決心しない上層部に苛立ちを感じていた。

そこで別の課の10年ほどの年長である原田少佐に相談にいった。
彼に相談すると、いつもじつに分かりやすく問題を解きほぐしてくれる。
はやる若手将校と冷静な少佐のやり取りが面白い。


高橋中尉「原田さん、上層部はなぜ、いつまでも決心しないでしょうか。
ぐずぐずしていると油が断たたれ、なにもできなくなるに決まっているのに」

高橋中尉は、同調する反応が原田少佐から聞けるものと期待していた。
しかし、ぜんぜん違った答えに驚いた。


原田少佐「君は本当にやったほうがいいと思っているのかね。
いいかい、ここでやけっぱちで事を構えたら、満州はもちろんのこと、朝鮮も台湾もなくしちゃうことになるんだよ。
この際ひとつ我慢をすれば、満州は駄目だが、朝鮮と台湾はうまくいけば残るよ」


高橋はびっくりして原田少佐の顔を見つめた。

原田少佐「そのところが、もし君にわからないとしたら、それは少佐と中尉の差だな」

高橋中尉「そんなことを言うから皆に、整備局のやつらは物ばかりいじくっているから軍人精神を忘れていると言われるのではないですか」


原田少佐「だから危ないんだよ。
そういう雰囲気が、まずます危ない方向へ国を引っ張っていくんだ」

高橋中尉「しかし、いまここで引っ込んだら、国民が黙っていないんじゃありませんか?」


原田少佐「大政治家というものは、正しいと自分で信じた場合、国民など黙らしてもその方向へ引っ張っていくものなんだ。
その代わり、自分も永遠に黙らされることを覚悟の上でね」

高橋中尉「そんな大政治家がいますかね」

原田少佐「いないね。昔はいたらしいがね」

高橋中尉「するとどうなるんですか」

原田少佐「結局、戦争することになるさ。そして負けるんだよ」


日米開戦、半年前のやり取りである。






・歴史は繰り返す。
僕が道路公団民営化に現場で関わるようになったのは、2001年4月に小泉さんが総理になってからだ。

道路族議員との派手な立ち回りばかりがメディアで強調されたが、民営化委員会のスタートと同時に、
僕と国土交通省との間できわめて深刻な論争が往復書簡のようなかたちで半年間も続いた。

数字の塹壕戦と呼んでもよいくらい、体力を要した。
委員会でデータを出させる。
ぎりぎりになって膨大なデータが送られてくる。

僕と20代の2,3人のスタッフで委員会当日まで徹夜の作業で、その数字を徹底的に分析する。
厳しい真剣勝負だった。

数字を誤魔化すと国が滅びる、と僕は信じて疑わない。
官僚機構は、虚実を巧みに使い分かる、と知っている。



・政治家の「腕力」と官僚の作った「統計」で決まってきたものが、正しい「事実」と「数字」で覆すことができるのだ。

交通需要推計を修正せざるを得なかった国土交通省幹部は、「正規軍がゲリラに敗れた」と洩らした。



・「空気」の正体をつかめ。
戦前の陸軍省で、そして戦後の国交省で、同じ霞ヶ関で官僚たちは同じような誤りを犯してきた。

自分がAと思っていても、Bが正しいと言う人びとが多ければ、
なんとなくその意見に引きづられ、Aです、といえなくなってしまう。


・アメリカ人でも「空気」に呑み込まれる。
そういう意味で、同調行動は日本人だけが陥りやすい罠ではない。




※コメント
会議でも、どうしても、その場の雰囲気で自分の思いと違うことをいってしまうことは多々ある。
そうならないためにも、自分で独自に情報収集して、データを集めることがなにより重要になってくる。
人とは違う、情報のパイプをいくつも作ることを心がけたい。


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