◆宮家邦彦『プロ外交官の仕事術:仕事の大事は5分で決まる』を読み解く


宮家氏は元外交官、アラビア語使いである。


※要旨


・仕事の大事は最初の5分で決まる。
これからの日本のビジネスパーソンは国際情勢の日々の様々なエピソードに惑わされず、
一瞬にして「本筋」を見極めるための「大局観」を養うべき。


・本書では、私の個人的体験を踏まえ、大局観を持つために必要と思われる以下のテクニックを書いた。

1.情報の分析法(人脈術)
2.人脈を生む語学力。
3.語学を駆使した交渉術。

4.一味違う発想力と発信力。
5.情報の分析法。
6.情報の選択法。
7.緊急事態の対処法。


・「人脈は作ろうと思っても作れるものではない」
幸い私は外交官としてカイロ、バクダッド、ワシントン、北京に合計10年以上在勤する機会を得たが、
これが人脈に関する偽らざる本音です。


・ワシントンでのアジアへの関心は低い。
残念ながら、ワシントンのアジア専門家は私たちが望むほど、質量とも強力ではない。
現在でも米国の国際関係専門家の主流は英国に留学し、欧州やロシア方面を重視する人々。
同様に優秀なグループは中東を専門としている。


・多忙なアメリカ人の「一期一会」ルール。
ワシントン勤務時代、可能な限り、ワシントンの米国人と朝食・昼食の約束を入れるように努力した。
彼らは一度は食事に付き合ってくれる。
問題はその後。
食事後に相手が私と会って面白かったと思わない限り、2度目の誘いに応じることはない。


・もう一度会ってもらうためのシンプルなこと。
第一は、出会いは「あくまで自然」でなければならない。

第二は、日本・アジア以外で、相手と共通の趣味、信条などで接点・共通点を探ること。
実はこのやり方、ワシントンの一般米国人が使うもっとも典型的な人脈構築術。

第三は、そしてもっとも重要なポイントは、
あなたの話の中身を可能な限り面白く、内容を濃くすること。
相手が関心を持ちながらも、よく知らないような興味深い情報を、
短時間で要領よく相手にインプットできれば最高。
要するに相手に「こいつと会うと、いろいろ勉強になる」と思わせることが重要。


・新しい出会いは求めない。
友人は狭く、深く、死ぬまで付き合う。


・人間学を磨こう。
会話のネタを持つ。


・タイミングと無欲で勝つ。
ある上院議員のスタッフと1992年の大統領選の8ヶ月前に出会った。
話の内容が深く、とても感心したので、帰り際に彼にそう伝えたら、
彼は「それなら僕の女房に是非そう言ってくれ」と、私たち夫妻を自宅に呼んでくれた。
半年後、彼は大統領候補の重要な外交アドバイザーに「化けて」いた。
その4ヵ月後、彼は国家安全保障会議の有力高官に「大化け」した。


・彼とはすぐにアポが取れる仲になった。
電話一本でアポをとり、相手を説得し、政治決断を強いる。
こうしたことの積み重ねこそが、ワシントンにおける政治なのだと実感した。


・外国語は、とにかく喋ってみよう。
語学はジャズの即興演奏。


・交渉は交渉前に、勝負を決める。
交渉の半分は目標設定で決まる。


・外交交渉は、外国より国内を重視しよう。
外交の8割は内政で決まる。
外務省で27年間勤務してつくづく思うことは、外交の8割は内政であるということ。


・メモは発想力向上の切り札。
発想の基本はメモ。
発想といっても、ずべては人の話を聞いたり、
本を読んだりして浮かんだ小さなヒントを丹念にメモすることから始まる。


・地理が分かれば、世界が分かる。


・博物館は情報の宝庫。
歴史は情報の宝庫。
私は新しい国を訪問する場合、何とか時間をやりくりして、
その国の歴史博物館と軍事博物館に行く日程を組むようにしている。


・「大局観」を磨くには、新聞・雑誌にある公開情報を丹念に調べることが一番の近道。


・現地の皮膚感覚を信じよう。


・海外旅行に行ったら市場に行け。
できれば、早朝のマーケットが一番よい。
市場で働いている人々の生の声が聞けたら、なおさら良い。
質問の内容は簡単。
最近物価はどうか。このパンは安いか、高いか。
最近生活は楽になったか。


・公開情報を活用しよう。
必要な情報の9割は公開されている。


・27年間の外務省勤務で得た情報分析に関する最も重要な教訓は、
「安易に機密情報に頼らず、公開情報だけで大局を読める分析能力を高めるべし」ということ。
誤解を恐れずに申し上げるが、一部の例外を除けば、一般に機密情報は最後の手段。


・公開情報はこうして集める。
押さえるべきは情報は、各国政府や国連、IMFなど国際機関が出している公式情報。
また私は、日頃から少なくとも、ワシントンポスト、ニューヨークタイムズ、アルジャジーラ、
エルサレムポスト、環球時報について、それぞれの英語サイトのヘッドラインを一日一度は見る。


・必読書を読む。
昔から外交、国際政治や歴史を学ぶためには、「これだけは読んでおけ」という必読リストがある。


・情報分析を極秘情報に過度に依存することは不健全。
分析とは、膨大な量の公開情報を丹念に読み込み、
政治、経済、軍事など様々な分野の専門家のクロスチェックを経て仮説を作り、
最後にそれを非公開情報によって検証するという地道な作業の繰り返し。


※コメント
中東を専門とする外交官の話は、欧米流とは少し違い面白みがある。
独特の視点を兼ね備えており、視野が広がる。
宮家氏の体験談は、ビジネス関係にも通用する。


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