◆堂目卓生『アダム・スミス、道徳感情論と国富論の世界』を読み解く


※要旨


・アダム・スミスは生涯において2つの書物を著した。
『道徳感情論』と『国富論』である。
2つの著作のうち、『道徳感情論』は倫理学、
『国富論』は経済学に属する本だといわれている。


・トマス・ペインは、『コモンセンス』を出版し、
植民地は一切の妥協を捨てて独立をめざすよう主張した。
『コモンセンス』は爆発的な売れ行きを見せ、植民地の人々の10人に1人が、
この扇動的な小冊子を読んだといわれる。


・イギリス政府にとってみれば、長年多額の資金をつぎ込んで獲得・維持してきた、
アメリカの植民地を失うことは絶対に阻止しなければならなかった。
アメリカ植民地を失うことは、大西洋貿易システムの要を失うことを意味し、
イギリス帝国の崩壊を意味していた。
国内の貿易業や輸出関連製造業も大きな打撃を受ける可能性があった。


・スミスは、1723年、スコットランドのカーコーディに生まれた。
彼はグラスゴー大学を卒業後、オックスフォード大学でも学ぶが、
中途退学し、スコットランドに戻る。


・スミスは、約3000冊の蔵書を残しており、その中には、
さまざまな時代、国、そして分野の書物が含まれている。
彼は広い範囲から膨大な知識を吸収したのだった。


・吸収された知識の膨大さに比べるならば、スミスが産出した著作は、
量としては、それほど多くない。
実際、彼自身が出版した書物は、『道徳感情論』と『国富論』だけである。


・『道徳感情論』によって、秩序を繁栄を基礎づける人間の諸本性は何か。
また、それらはどのように作用するのかを解明したスミスは、次の段階として、
秩序と繁栄を導く一般原理の具体的内容は何か、それは人類の歴史において、
どのように作用し、また歪められてきたかを論じる計画をもっていた。


・『道徳感情論』の初版を出版した後、スミスはグラスゴー大学で、
法学に関する講義を行った。
学生がとったノートによれば、スミスは正義の諸法だけでなく、
生活行政、公収入、軍備などについても講義した。


・スミスは正義に関する一般原理と実際の法の歴史についての著作を出版することなく、
この世を去った。
一方、生活行政、公収入、および軍備に関する一般原理と歴史は、
2巻本の書物として出版された。
その書物は、『国富論』と名付けられた。


・ローマ帝国没落後のヨーロッパにおいて進められてきた経済政策や産業政策は、
製造業や商業を優遇するものであった。


・18世紀のイギリスにおいて、政府支出の約9割が軍事費と国債費であった。
国債発行の目的は戦費調達であったのだから、
政府支出のほとんどが軍事関連の支出であったといえる。
フランスとの戦争がなければ、イギリスの資本はもっと速く蓄積されいた。


・ヨーロッパの経済は、外国貿易、製造業、農業という順序で発展した。


・ヨーロッパ諸国において、遠隔地貿易の成功こそ国の繁栄をもたらすという、
理念を前提とした政策がとられるようになった。
それは遠隔地貿易の利権や金銀をめぐってのゼロサム・ゲームであり、
ヨーロッパ各国の繁栄をつねに不安定なものにするとともに、
諸国間の関係を敵対的なものにした。


・人と人をつなぐ富。
私たちがスミスの思想体系から学ぶことができるのは、
市場社会における富の機能についてである。
いうまでもなく、富の主要な機能は、人間を生存させ、繁殖させ、
その生活を便利で安楽なものにすることである。
しかし、彼は富の中に、それ以上の機能を見出していた。
それは人と人をつなぐという機能である。


・スミスにとって、市場は富を媒介にして見知らぬ者どうしが世話を交換する場であった。


・経済成長とは、富が増大することだけでなく、
富んだ人と貧しい人の間につながりができることを意味する。


・富んだ人が自分の富を自分だけで消費するのであれば、
あるいは自分の家の中にしまいこむのであれば、
富んだ人と貧しい人とのつながりは何もない。


・しかし、富んだ人は、より大きな財産を形成しようという野心から、
自分の富を農業、製造業、商業などの産業に投資する。
よれによって、経済が成長するとともに、労働需要が増大し、
貧しい人に仕事が与えられる。


・貧しい人は、賃金という形で富を手にいれ、
平静な生活を送ることができる。
経済成長の真の目的は、ここにある。


・一方、富んだ人は投資活動によって、より大きな富を獲得する。
このように富んだ人は貧しい人を助けようという意図をもたないにもかかわらず、
また貧しい人は、富んだ人の野心を満たそうという意図をもたないにもかかわらず、
両者は富を媒介としてつなげられるのである。


・さらに貿易は、外国の人々、言語や文化や慣習が異なるために、
同感することが困難である人々との交流を深め、相互依存を強める。


・私たちは、貿易を通じて外国の人々との言語、文化、慣習を理解し、
その結果、国民的偏見を弱めることができる。


※コメント
抽象的なものの考え方を学ぶために、アダム・スミスの『国富論』は役に立つ。
充分にりかいできるよう、読み込みたい。


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