◆佐々淳行『私を通りすぎた政治家たち』を読み解く


佐々氏は、警察官僚出身、内閣安全保障室長などを歴任。
危機管理のご意見番だ。



※要旨


・政治家は、ひとたび事が起これば決断をして指揮命令しなくてはならない。
卑怯未練の振る舞いがあってはならん。


・今や海外在留邦人は120万人、
海外旅行者は年間1700万人にも達するグローバル化の時代である。
その安全を守るには、海外各地の危険な兆候をいち早く掴んで、
危険情報の周知、渡航制限、家族や不要不急の要員の退去、迅速な退避勧告、
さらには脱出作戦へとつないでいく必要がある。


・人間は自分にとって都合のいいことだけ信じやすいものだ。
朝鮮半島有事や中東での軍事衝突など、「たぶん起こらないだろう」と考えがちだが、
危機の芽に目を閉じ、耳をふさいではいけない。


・情報力の強化は大切だが、予算にも人員にも限りがある。
何十年という時間もかかる。
であるならば、弱いうさぎのように長い耳を持って情報を収集しなくてはならない。
ウサギのような早い逃げ足も必要である。


・昭和が終わる頃まで、政界、官界、財界、言論界などには「高文組」と呼ばれる人たちがいた。
高文組とは、1948年まで実施されていた、
高級官僚になるための「高等文官試験」の合格者のことだ。


・高文組でもとくに昭和15年から18年組にはもうひとつ強みがあった。
旧制大学や高等文官試験合格後に志願して、短期現役士官(短現)として、
海軍経理学校に入って主計中尉で任官した経歴を併せ持つ人たちが、
各界いたるところに散らばっていたのである。


・彼らは優秀な上、結束も固くて横の連絡が非常に緊密だった。
いわゆる将校クラブ、将校団ともいうべき集団だった。
そんな海軍の同志意識、仲間意識といったものが縦割り行政なのかで生きていたのである。
ノーブレス・オブリージュも彼らの人格を支配していた。


・東日本大震災の経験が教えるように、
危機管理の際は、シンプルな体制をつくるのが原則だ。


・日本版NSCでは首相、官房長官、外務大臣、防衛大臣の4人で決める。
決定者が少ないことは即断即決につながる可能性がより高い。


・危機管理において肝要なのは、まず毅然とした姿勢をはっきりと示すことだ。
凡百のリーダーにはそれができない。
形だけ繕ってみても、すぐに馬脚を現すものだ。


・アラブ世界であれば平時から宗教関係者や族長といった人々と、
人間関係を築いておかないことには、一次情報は手に入らない。
見知らぬ相手に「緊急時だから情報をくれ」と求めても、
断られるのは当然である。


・ともあれ、もう追記することもあるまい。
これが私の最後の著作となるかもしれないが、
少なくとも本書で何度も強調したノーブレス・オブリージュの精神を持った政治家たちが、
これからの日本を背負っていくことを、滅びゆく士族の末裔の一人として、
「老兵」として強く期待したい。


※コメント
これまで数多くの佐々氏の本を読んできたが、
どれも実戦経験と理論をうまく披露している役に立つものばかりだ。
官僚ばかりではなく、民間の危機管理にも参考になる。
彼は84歳なのでもう彼の著書をだんだんと読めなくなるかもしれない。
そう思いながら、大事に読んでいきたい。


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