◆ロバート・カプラン『南シナ海・中国海洋覇権の野望』を読み解く
(奥山真司氏、翻訳)


※要旨


・本書でカプランが説明しているように、現在の中国とその周辺をめぐる、
領土・領海争いの中心は南シナ海で展開されており、これほど出版時期がタイムリーなものはない。


・この質の高さもあってか、本書は米国の政府関係者の間でもやはり話題を呼んでいる。
最近になってから本書を読んだ米軍制服組トップのマーティン・デンプシー統合参謀本部議長が、
「彼のほかの本と同様によく書かれており、知的刺激に溢れている。
カプランはインド・太平洋地域における非常に重要な問題を提起している。
本書は世界におけるこのきわめて重要な地域をよりよく理解しようと興味を持つ、
いかなる人々にとっても読む価値のある本だ」
と絶賛している。


・南シナ海は、西太平洋とインド洋の「喉」として機能している。
ここは世界の海上交通ルートが交差する、
経済面でそれぞれをつなげる役割を果たす器官の集中した場所だ。


・南シナ海を実質的に支配できれば、中国はほんものの「二正面海軍」、
つまり西太平洋とインド洋で海軍力を発揮できるようになる。


・アメリカは西半球を支配しており、しかも東半球のバランス・オブ・パワーに、
影響を与えられるだけのパワーを持っているため、世界の平和を維持するだけでなく、
国際貿易の土台となる「海上交通線」というグローバルな公共財を守っている。
現在、私たちが目にしているグローバル化というものは、
米海軍と空軍の存在がなければそもそも実現不可能なものである。


・実際のところ、アメリカは空軍と海軍のプラットフォームを世界中に派遣していて、
これがアメリカの外交面での発言に重みを与えているのである。
そして同時にこれが世界中の民主制と自由社会を支援するために使われている。
このような米軍のプレゼンスが大幅に減少した世界を想像してみると、
世界、とくに南シナ海は非常に違った場所に見えてくる。


・海軍力は何のために使われるものだろうか?
アメリカ海軍はみずからの任務をアメリカ国民に説明するのに長年苦労してきた。
海軍基地の近くに住んでいるような人々を除いて、
彼らは一般的な国民が一度も見たこともなく、
さらには新聞でも読んだことさえないような何百隻もの船に、
なぜ数百億ドルもの額の血税が必要なのかを説明しなければならないのだ。


・ベトナムののような国が将来目指すことになる「自由」という価値観は、
将来的にアメリカ自身にとってさらに重要になってくるかもしれない。
そして何度も繰り返すが、重要なのは価値観だけではなく、それを支える軍事力でもあるのだ。


・潜水艦が海の下で移動する情報収集機関であることも忘れてはならない。
中国は現在60隻以上の潜水艦を保有しており、
数年以内にその数が米軍よりもわずかに多い75隻になると見込まれる。


・現在のマレーシアの経済やテクノロジー面での活発さから見えてくる輝かしい未来への展望は、
決して偶然の産物ではない。
1981年から2003年まで首相をつとめたマハティールによって生み出された。


・マハティール政権は空港、高速道路、橋、高層ビル、コンテナ港、ダム、
サイバーネットワークなどのインフラ整備に積極的に投資した。
テクノロジー好きであったマハティールは、輸送・交通機関と通信インフラが、
21世紀の国家の成功に決定的な役割を担うことをよく理解していた。


・マハティールの支配の仕方は、細かい部分に目を配ると同時に、
大きく俯瞰する目を持ったものだった。
彼は「細部にこだわるビジョナリー」であり、
自分の国をまるで医師が患者を診るように扱ったのである。


・大局的な視点を持った美学を伴う彼の大きな構想力は、
クアラルンプールにある日本のデザインによる超近代的な巨大空港を造り上げたことにつながる。
この空港は世界最大規模であり、その美しさも群を抜いている。


・シンガポールは、世界でもっとも重要な海洋のチョークポイントとして、
航路が集積しているマラッカ海峡に、天然の深水港を抱えている。


・私がいままでに会ってきた世界中の外交・国防分野のエリートの中で、
シンガポールの人々ほど冷酷な考え方をしている人間はいない。


・あるシンガポール人は、
「大事なのは軍事力と海軍のプレゼンスなんですよ。
情熱的で善意あふれるおしゃべりは意味がないんです」
とコメントでうまくまとめている。


※コメント
待望のカプランの新作本である。
現場をくまなく歩き、コラムを書くというジャーナリストの彼らしい筆致は格別だ。
公開文書を読むことも大事だが、彼のように各国の関係者を取材して、
オフレコ・コメントを多く紹介してもらうとワクワクしてしまう。
これこそ現場主義者によって書かれたレポートの真骨頂だろう。




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