◆石原慎太郎『エゴの力』を読み解く


※要旨


・人生にはいろいろな岐路がある。
恋愛にしろ結婚にしろ、あるいは仕事の上での意見の違いや摩擦、
いずれにせよそこで何を選ぶか、どう進むかを決めるのは所詮、自分自身でしかない。
その選択の起点は自らのエゴによるしかありはしない。


・成功、不成功、勝利、敗北、人生を決めるのはエゴの力でしかない。
ならばエゴとは何なのか、それは人間の個性。
その個性とは何なのか。
個性とはその人間の感性が培うものでしかない。


・私が都知事に就任してすぐに、英国のサッチャー元首相と会談した。
そしてフォークランド紛争について語り合った。
彼女はこういった。
「私は誰がどう見ても傾いていくイギリスの威信というものを取り戻すためには、
あの小さな領土を絶対に手放してはならないと思った。
そこで周りに相談しても皆が躊躇するあの戦争を私自身の責任で決断したのです。
たった一人だけ参謀総長が私を支持してくれたので、
本当に2人して国家の命運を決めるあの戦争に踏み切ったのよ」


さらにこう語っていた。
「やはり政治家は一度決めたことを立ち止まらずに貫き通さなければ、
政治家である意味はありはしないと思うわ。
そして周りの反対を押し切ってでも正しいと思ったことを行うときに、
それを支持する信頼できる有能な部下が一人だけでもあれば必ず事を成し遂げることができるものよ」


・感性を磨きたければ趣味を持て。
人生にはいろんな出来事が待ち受けている。
その行程のさまざまなハードルを越えて納得のいく人生を過ごすために必要なものは、
人間の備えた強さを存分に発揮することに他ならない。
人間の強さとは何かといえば、それはその人間の備えた個性の力だ。


・何か自分が好きな趣味をもつことは、なんとかもっと上達したいと工夫することを意味する。
自分の感性を強いて駆使して工夫を促す。
これは極めて大脳生理の理にかなったこと。
自分の自我なり個性に自信のない人間は、
何でもいい、たとえば動物を飼うことでも芸事でもスポーツでもいいから、
絶対に自分の趣味を持つこと。


・私が総じて発想力のない役人たちにいっていることは、
君たちが発想力をつけるためにも何でもいいから、
こんなつまらんことと思わずにとにかく自分が興味の持てる趣味を持て、と。
そして、その趣味で自分の上達をはかることで初めて感性が育まれ、
強靭なものになって発想力を備え、仕事の中でそれが活かされ、
かつまたそれによってエゴが強化され、組織のなかでのその人間の評価も高まる。


・世界的大数学者の岡潔さんの成功の所以は、
私は岡さんが日頃から非常に俳句が好きで、
特に芭蕉の俳句にハマッていたことにあると考えている。


・岡さんは、あるとき数学の難問を解くために思い立って、
芭蕉の有名な奥の細道を、芭蕉が作句した時候と場所に合わせて辿った。
たとえば「しずかさや岩にしみ入る蝉の声」なる名句でいえば、
あの山形の立石寺の裏庭を訪れ、そこの縁台に腰をおろし、
庭で鳴いている蝉の声に聞き入りながら鑑賞したそうな。
そのようなことを繰り返した結果、彼の感性、つまり自我が触発され、
誰も成しえなかった数学の大難問を20年で解ききってしまった。


・これは俳句という世界で最も短い詩形をあみ出した日本人独特の感性、
たとえばアンドレ・マルローが、
「永遠を一瞬のなかに凍結できるのは日本人だけだ」
と驚嘆した日本人独特の感性を、
岡さんが俳句の中に認め見出した。
それを自分の体の内で体得して味わうことで、
そのエネルギーが感性を刺激し岡潔のエゴを形成し、
それが働いて誰も解けなかった数学の難問を解かせたということだ。


・浪費こそが最大の貯金。


・無理して使った金の人生への効用。
私は海でのスポーツとしてのオーシャンレースに現(うつつ)を抜かしていた。
これまた日本の近海では味わうことのできない、まさに太平洋ならではの海の風物であり、
そのなかで海を操りながら事あるごとにしみじみ太平洋という世界最大の海の魅力を満喫することができ、
その全てが私の体のうちにしまいこまれて、
わたしの物書きとしての、いや、それ以外の私のすべての人格というものの形成に、
役立ってくれたような気がする。


・昔からいい習わされてきた絶対の教訓、
「天は自ら助くる者を助く」
という言葉を思い起こすべき。


・自分で自分を助けることで、自分で努力して自分の人生を切り拓いていくために強い自分をつくる。
強いエゴを培い備えていくためには他人に頼ることなしに自ら努める。
自らの個性を強めるために鋭い感性を培い備えるためには、
自分の好みに合った趣味を選び、それをこなして熟達するために努力する、
つまり脳幹を刺激し続けることだ。


※コメント
さすが石原さんの面白い見解だ。
勉強になる。
個性の塊である、石原さんだからこそ書けた一冊だろう。


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