◆火坂雅志『沢彦:信長の軍師、上巻』を読み解く


※要旨


・当時の禅寺は、諸国の秀才が集まる最高学府のようなものである。
沢彦は、その妙心寺でたちまち頭角をあらわした。
弁舌爽やかにして、博覧強記、ことに漢文を書かせては並ぶ者なく、
「菅原道真の再来」
といわれた。


・清洲の織田大和守家に仕える三奉行のひとりだったのが、
勝幡城主の織田信秀という武将だった。
守護職の家臣の、そのまた家臣という立場から、
信秀はしだいに頭角をあらわし、
国内における他の勢力を圧していく。
それを可能たらしめたのは、領内の川湊、
「津島」
の経済力にほかならない。


・津島は木曽川の河口に近く、伊勢湾に通じる水運の結節点にあたった。
この津島の豪商・大橋清兵衛のもとに妹を嫁がせた信秀は、
その地の富を握ることによって軍事力を増強。


・平手政秀は、吉法師(織田信長)の教育係であると同時に、
財政面の担当者であり、織田家の外交官的役割もまかされていた。
人当たりのよさと気配り、顔の広さを武器に、
外交術によって存在感を発揮していた。
田舎武将には珍しく、東山流の茶の湯の心得があり、
屋敷の庭に数奇屋をかまえ、茶道具も多く所有していた。


・遠大な目標のためには、地道な努力こそ肝要である。


・「一日作さざれば一日食らわず」
の言葉通り、禅寺では堂内、屋外の掃除は一日も欠くことなくおこなわれる。
塵を掃くことすなわち、
自身のなかにある無明煩悩を掃き清めることでもある。


・あれこれ思い悩みすぎると、身体も心も硬直し、
物事はうまくいかなくなる。
ただ目の前にあらわれたる敵を、
無心でたたき伏していけばよい。
それを繰り返しているうちに、おのずと形勢も変わる。


・滝に打たれる。
水の圧力に耐えながら、目を閉じ、合掌していると、
頭のなかはおのずから無念無想の境地に入った。
禅では、ものにとらわれないことを最上の教えとする。
「無心」
である。


・沢彦は、桶狭間の決戦を、
「高度な情報戦」
ととらえていた。
信長も、そのあたりは心得ている。
沢彦の予想をはるかに上まわる諜者を敵地へ送り込み、
情報集めに全力をそそいだ。
最新の情報をつかみ、敵軍の動きを徹底的に洗い出し、
地の利がある場所での戦いに持ち込む。
今川の大軍に風穴をあけるには、唯一それしかない。


・フロイスの観察眼はするどい。
彼は、一見、無神論者のように見える信長が、
「禅宗の教え」
すなわち、禅僧の沢彦の教えだけは従っていることを見抜いていた。


・妙心寺の僧侶たちは、その出身母体の特性から、
それぞれが多かれ少なかれ、経済に通じ、経営論を身につけていた。
沢彦もむろん、そのひとりである。


・金や物資の流通は、経済が発展していくための基本中の基本である。


※コメント
あまり注目されていない沢彦に焦点をあてているところに本書の面白みがある。
作者もよく彼を選抜したと思う。



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