◆佐野眞一『甘粕正彦、乱心の曠野』を読み解く


※要旨


・甘粕正彦は日本近代史上最大の謎を抱え込んだ男だった。
甘粕は一切の秘密を墓場まで持っていってしまったため、
すべての責任を甘粕ひとりに押し付けられる、
きわめて好都合な存在ともなっている。


・甘粕には満州における豊富な資金源と、
地下茎のようにからみあった複雑な人脈があった。


・甘粕はいつしか、満州の昼は関東軍が支配し、
満州の夜は甘粕が支配すると囁かれるまでになった。
「満州の夜の帝王」という異名をほしいままにしたその力の源泉こそ、
甘粕最大の謎であり、私が甘粕に惹かれた最大の理由だった。


・甘粕理事長ほど仕事がスピーディで、
事務能力の高かった人は見たことがありません。
元満映社員は一様にそう言った。


・満州に渡ってからの甘粕の椀飯振舞は有名だが、
市川憲兵分隊長時代から彼は、部下のためなら金に糸目をつけない、
金ばなれのいい男として通っていた。


・評論家の竹中労は大杉殺しは甘粕ではないと断じた『断影・大杉栄』のなかで、
クラシック音楽とアメリカ映画を愛し、
西洋煙草とウイスキーを好んだ甘粕は、箙に花を挿したい男であり、
またその花を隠したい男だったと述べている。


・甘粕と親しかった関係者が、満州の甘粕について一様に言い残した言葉がある。
それはノーブルさを保持したまま、満州の魔王になることを覚悟した、
甘粕の変貌と断念を一言で言い当てて、みごとである。

「甘粕の趣味は、釣りと鴨撃ち、それに謀略だった」


・彼は右翼思想に凝り固まっただけの偏狭な男ではなかった。
その後理事長に就いた満映時代の抜群の事務処理能力と、
スタッフの過去の経歴を問わない人事方針が示すように、
甘粕は仕事ができれば右翼も左翼でも頓着しなかった。


・甘粕は昭和15年に出版された『アラビアのロレンス』が、
愛読書だったという。


・武藤富男が満映理事長に甘粕がはまり役だと考えたのには、
4つの理由があった。

1.優れた経営の才覚を持っていた。

2.独創的な感覚を持っていた。

3.活動屋というやくざ者を押さえるだけの迫力を持っていた。

4.文化全般に深い理解を持っていた。


・古海忠之は著書に、
「甘粕は国際問題に関心を有し、
いわゆる国際政治的謀略には異常な執着を持っていた。
彼が長期にわたってアジアより英国勢力を駆逐する、
いわゆる『排英工作』を実施していたことを知っている人はほとんどあるまい」
と記している。


・また甘粕の最後の秘書として仕えた斎藤亮男は、
戦後書かれた手記で、甘粕は仏領インドシナ、フィリピン、ビルマ、
アフガニスタン、パキスタンなどの少数民族の独立運動に興味を持っており、
その情報網はエジプト、イラン、イラク、蘭領インドシナから、
南米方面にまで及んでいたと回想している。



※コメント
歴史の人物を一行で説明することはできない。
多くの人々は、多面的であり、理解することは時間がかかる。
単なる思い込みのみで人を評価することは避けたい。


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