◆早坂茂三『人心はどんな男に向かうのか:宰相の器』を読み解く


※要旨


・竹下登は党内事情を掌を指すように知っていた。
誰を登用すれば誰が喜ぶか、ツボを知った交通整理をやった。
日本社会はカネと人事を押さえた人間が頭領になる。


・人間、何事につけてもツキが肝要だ。
競馬、マージャン、花札、ルーレット、それに仕事、商売、
何でもそうだが、ツイている時は空恐ろしいほどにつく。
打つ手、選ぶ手がどんぴしゃりと当たる。
逆に、ツイていない時は、どうあがいても裏目ばかり出る。


・政治とは、本質的に結果責任の世界だ。
終わりよければ、すべてよし。
それ以外に正否を断ずる価値尺度はない。
指導者が無類の女好きで手当たり次第に女を抱き、
酒を浴びるほど飲む男であったとしても、事に臨んで沈着冷静、
剛毅果断、決断と実行で人民に平和を保障し、仕事を与え、
国中に一家団欒の日常を実現したとすれば、
彼は有能な指導者である。

後世の歴史家は第一級の政治家として史書に記録するだろう。
政治家の善悪を決める物差しは、本来、これだけである。


・建前と偽善で恥部を隠すイチジクの葉をはぎとれば、
この世は弱肉強食、優勝劣敗、適者生存、
ジャングルの法則が支配する修羅の巷だ。
洋の東西を問わず、昔も今も変わらない。


・スケールが大きくて、エネルギーに溢れた指導者が
日本国に登場するのは困難になった。
国家エネルギーの衰弱に連動しなければ幸いである。
当代一流のコラムニスト・山本夏彦は、
繰り返し指摘してきた。

「汚職は国を滅ぼさない。正義は国を滅ぼす」

私も同感である。


・政権に求められるのは、いつでも強さである。
待ったなしで押し寄せる内政、外交の難問を巧みにさばく。
アメとムチで野党の追及をかわし、あるいは取り込む。
煮ても、焼いても、フライにしても食えない外国相手の交渉で国益をしなやかに守りぬく。
これをやることだ。
それに加えて、口やかましいマスコミの建前論とうまく折り合いをつけることも大切だ。


・タフネゴイエイターの条件。
昭和46年7月、自民党幹事長だった田中角栄が通産大臣に転出した。
当時の宰相は佐藤栄作。
このとき佐藤は暗礁に乗り上げていた日米繊維交渉に手を焼いていた。
ニクソン大統領から2年越しで解決をせっつかれている。
沖縄返還の約束を早く取り付けたい。
佐藤総理は、窮余の末、角栄を呼び出した。
「角さん、繊維を片づけてくれ」


・田中は帝人の大屋晋三はじめ繊維業界の苦情をじっくり聞いて、
スクラップ・アンド・ビルドの必要資金をたっぷり大蔵省から引き出し、
外務省に猿ぐつわをはめて、疾風迅雷、
わずか半年で天下の難問を処理した。


・外交交渉と内政は同義語である。
外国との約束を実行するためには、国内の各界各層に広く深い人脈を持ち、
関係者の錯綜する利害を調整し、根回しを行い、必要な手当てをして、
三方一両損、これを納得させ、合意を取り付けることが必要だ。


・外国が交渉相手をタフネゴシエイターと評価するのは、
約束事を期限内に実行できるかどうか、判断基準はそれしかない。
流暢な英語力とか、古今の典籍に通じている学識、教養などは、
交渉事の潤滑油、添え物の花である。


・世の中は、普段の平らな付き合いと、実績がモノをいう。





※コメント
激しい政治の現場に身をおいた早坂氏の言葉は重い。
また彼は記者出身なので、文章がうまい。
読みやすく、躍動する筆致にも注目したい。


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