◆大前研一『クオリティ国家という戦略』を読み解く


※要旨


・現在の日本はどういう状況になっているのか。
ひとことで言えば、「中途半端な国」になっているのである。
人材の質も中途半端で、人件費が高いのに付加価値力や特にサービス業の生産性は低い。


・一方、今世界で繁栄している国はふたつのタイプがある。
ひとつは「ボリューム国家」だ。
経済規模が巨大で、人口・労働力のボリュームと低コストの人材費を強みとして工業国家モデルで急成長している。
その代表がBRICsのブラジル、ロシア、インド、中国だ。


・もうひとつが「クオリティ国家」と呼んでいる国々である。
経済規模は小さく、人口が300万〜1000万人、一人当たりのGDPが400万円以上。
世界の繁栄を取り込むのが非常にうまいという共通点がある。
人件費は高いが、それをカバーする付加価値力と生産性の高い人材が揃っている。


・規模の拡大を目指すボリューム国家に対して質の向上を目指す国家であり、
スイス、シンガポール、フィンランド、スウェーデンが典型だ。


・クオリティ国家の大きさは、日本が道州制になった場合の道州と同じくらいだ。
ならば、日本は早急に道州制を導入し、各道州がスイスやシンガポールやフィンランドなどを参考にしながら、
思い思いの戦略を立てて自立したクオリティ国家を目指せばよい。


・クオリティ国家の特徴は、世界に出て行くだけではなく世界からヒト、モノ、カネや企業、
そして情報を呼び込むために税金体系を自由に決めている。
ほとんどの国は相続税がゼロで所得税や法人税も安いことである。
ところが日本は加工貿易立国の工業国家モデルのままだから、いまだに出て行くことばかりを考えている。


・道州が世界の中で自立していくためには、それぞれが自分なりの「クオリティ国家像」を明確に描いていなければならない。
質の高い国家、という考え方には、生活の質、社会の質、教育の質、自然や街並みの質、政治制度の質など、
あらゆる断面で世界の規範となるような質が実現されなくてはならない。


・クオリティ国家にとって、とりわけ重要なのは「ブランド戦略」である。

かつて私は、時計会社タグホイヤーのホイヤー名誉会長に、
「もし、セイコーの再生を頼まれたら、どうするか?」と質問した。

彼はこう言った。
「私を雇えばよい。
セイコーは時計を作ろうとしている。
だが、現在の時計業界は時計を作る競争ではなく、
いかにブランドを維持して高い付加価値をお客さんに認めてもらうか、
というブランド・マネージメントの競争だ」
「ブランドを維持するためには、1人のプロデューサーがいればよい。
だから、私のように高級ブランドのマーケティングを熟知しているプロを1人雇って全部任せればよい」


・複数の「ハブ拠点」で世界を呼び込むシステム構築のうまさ。
シンガポールは、国家の中にさまざまな「ハブ拠点」を作ることによって、
戦略的に世界から、ヒト、モノ、カネ、情報を吸引している。


・実はアメリカは、ひとつの国家というよりもクオリティ国家の集合体というべき存在。


・税率の低さは世界から企業と人材とカネを呼び込む。


※コメント
日本維新の会の橋下氏は、大前氏の本を熟読して、自身の政策に反映しているという。
今後どういった統治機構になるか、大前氏の理論を見ながらウォッチしていきたい。


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