◆小松正之『劣勢を逆転する交渉力』を読み解く


小松氏の米欧豪の反捕鯨包囲網に挑み続けた13年の記録。
国際会議の現場で培ったノウハウを全公開。



※要旨


・私は20年も長きにわたり国際交渉のただ中にあって、
その前線で仕事をしてきた。
多くの上司に恵まれてきた。
1985年から、私はアメリカとの日米漁業交渉の担当になった。
水産庁長官や水産庁次長といった当時の百戦錬磨の諸先輩方の交渉ぶりを見たり、
同席したりして、
私は国際交渉のやり方を実地に身につけた。


・日々の仕事の中で、
私は国際交渉の基本から国内折衝のしかたまでを学んだ。
英語での交渉のやり方はもちろん、
国内でも官邸や他省庁、水産業界との折衝や対話を通じて、
どのように自分の考えを出し、省庁として、
国としての方針をまとめ上げるのか、
そのためのリーダーシップを誰がどのように発揮したのかを目の当たりにした。


・ローマでの仕事を終えて帰国した私は、
1991年から捕鯨交渉に携わることになった。
「クジラを殺すな」という国際世論に押されて、
日本の捕鯨の火が今まさに消えようとしていたころである。


・ここでも多くの諸先輩方の指導を得た。
どこの交渉に行くにも、自分はその上司の交渉ぶりを見て学び、
また直接レクチャーを受けた。
何ものにも代えがたい貴重な体験だった。


・私の時代には、OJTが機能していた。
私は外国政府関係者とメディアから「タフ・ネゴシエイター」といわれた。
それは戦後の混乱期から水産庁で受け継がれてきた交渉人の系譜が、
そうさせたのであった。
一緒に、「切った張った」の修羅場をくぐり抜けてきた先輩たちの姿を
この目に焼き付けてきたからである。


・私が携わってきたのは、農林水産関係という限られた分野であったが、
20年もの間、国際交渉の前線で仕事をしてきた。
その過程で、真の交渉力とは何か、
リーダーシップとは何かをいろいろな局面で考えさせられ、
実地に体験してきた。


・交渉の目的は合意ではない。


・捕鯨は文化であり、伝統である。


・交渉相手の批判は「宝の山」である。
批判されてこそ次の手が見えてくる。


・批判に応え、さらなる批判を封じ込める。
相手の批判に真面目に応えるだけで、
相手にダメージを与えられる。


・誰よりも早く発言して議論を引っ張る。


・議長になって会議を仕切る。
誰に話を聞くかで流れが変わる。


・日本人スタッフの地位向上をはかる。
分担金の大きさと比べて圧倒的に少ない日本人職員。


・国際交渉の表舞台が会議であるとすれば、
それを支えるのは事務局のスタッフである。
国連機関の職員は、みずから情報を収集分析するとともに、
会議の運営を側面からサポートしている。
そこに日本人が多くいれば、当然日本の影響力は高くなる。
各国もそれがわかっているから、
自国の人間を事務局に送り込もうと、
あの手この手を使ってくる。


・同じ話を何度もされるとプレッシャーになる。
私がどうやって日本人スタッフの地位向上をはかったかというと、
特別なことは何もしていない。
そのスタッフの上司のところへ行って、四方山話をする。
そして、日本人スタッフの評価を聞いて、
昇格の検討を要請する。


・特別なことはいらない、ただ続けるだけ。
こういうことは、続けることに意味がある。
大事なのは、その案件をつねに相手に意識させることだ。
そのために、定期的に会いに行くのである。


・私の交渉術というのは術と呼ぶほどのものではなく、
当たり前のことを当たり前にやること、
淡々とやり続けること。
それに尽きるのではないかと思う。


・交渉は会議の前からはじまっている。
会議資料の作り方と事前の根回し。
交渉の成否は事前準備にかかっている。


・資料づくりのコツは、
一つは簡潔にまとめること。
もう一つは相手の目線に合わせること、である。


・事前の対話を通じて味方を増やす。
会議に至るまでの準備期間でどれだけ濃密なコミュニケーションができたか、
それによってその国の投票行動が決まるといっても過言ではない。


・交渉力はどれだけ場数を踏んだかで決まる。


・こちらが出さなければ相手の情報が使われる。


・大事なのは、淡々と事実を提供するという姿勢を貫くことだ。
事実をありのままに提供すれば、
こちらの意図を曲解されることなく、
一般の国民に伝達してもらえる可能性が高い。
要するに、特別なことは何もしていないが、
原理原則にのっとって幅広くやるから、
仕事量が膨大になる。





※コメント
激しい漁業交渉での貴重なノウハウを公開していただき嬉しい。
これは交渉を仕事とするすべての人と、
日本人の多くに読んでもらいたい。
日本のサバイバルのために。


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