◆榊原英資『財務官僚の仕事力』を読み解く



※要旨


・各省庁の予算編成権は、財務省の力の源泉となっている。
予算は最終的に閣議で決定され、
国会の承認を得なければならないが、
基本的には「財務省原案」がそのまま国家予算として成立する。
それは主計局の幹部が担当大臣や与野党の主要な政治家に十分な根回しをして、
原案の段階で実質的な承認を得ているからだ。


・厳しい予算折衝・査定に向けて、
主計局の主計官(課長級)や主査たちは、
担当省庁の業務内容について猛勉強せざるを得ない。
相対する担当者は、役職が上のキャリア官僚であり、
その道のプロフェッショナルだ。
そんな相手でありながら議論で言い負かされるわけにはいかない。


・主計局や主税局ではノンキャリアに予算や税の専門家が多く、
彼らとうまく組まないとキャリアの仕事ははかどらない。


・筆者の同期で主税局長、事務次官になった薄井信明も主税局時代、
ベテランのノンキャリアを非常に大切にしていた。
主計局には「七夕会」というノンキャリアの集まりがあり、
折に触れて夕食会などを催していた。
キャリア官僚たちはその会に酒を贈るなどして、
相当気を使っていた。


・中央省庁において大臣はいわば象徴的存在。
実質的なリーダーは事務次官や局長など。
しかし、それを表に出しては具合が悪いので、
大臣がすべてを理解して仕切っているように、
対外的に見せる官僚独特のノウハウが必要になる。


・そこで「ワル」の出番となるわけだ。
もっとも、悪意を込めた「ワル」ではなく、
ある種の敬意を込めた「ワル」だ。
丁寧に大臣に報告しつつ、一方では新聞記者らに根回しする。
大臣を立て、さも大臣が仕事をしたように世間に報道してもらう。


・黒子に徹して根回し。
大蔵省スキャンダルを機に「ワル」という言葉が
あまり使われなくなったが。
しかし官僚が黒子に徹して大臣を立てるという仕事の原則は、
当然のこととして今でも守られている。


・官僚は必要に応じて、さまざまな情報を大臣や有力議員に流して根回しする。
この根回しが目的達成の重要な鍵を握る。
大臣だけでなく、政権与党の役員、
特に重要な意思決定に携わる党三役(幹事長、政務調査会長、総務会長)
に対する根回しも重要だ。


・様々な場数を踏んでいるエース級の財務官僚だからこそ、
首相秘書官や大臣秘書官というデリケートな役回りを
うまくこなすことができる。


・こうした財務官僚の秘書官たちが、
財務本省と密接に連絡をとり合うことが、
財務行政を切り盛りしていく大きな助けとなる。




※コメント
財務省の経験者が語る官僚の仕事力は面白い。
さまざまな分野において、応用がきく。
今後も彼らの事情について調査したい。


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