◆河谷史夫『記者風伝』を読み解く
※要旨
・「伝説の記者」といわれた守山義雄。
いつも寡黙だった守山部長が繰り返し言っていたことを、森本は覚えている。
「おもろいと思ったこと、それがニュースや」
「おもろいと思ったこと、それを調べればええのや」
「おもろいと思ったこと、それを書きなさい」
・後藤基夫は「裏の裏まで知る政治記者」といわれていた。
・後藤を知る人はこういっている。
「ひと言でいうと、書かざる大記者という面があった。
取材源についてはほんとすごかった」
・新聞記者には「掘り屋」と「書き屋」がある。
取材対象に迫り、一体になってまでも材料を取ってくるのがいなければどだい話にならないが、
これはたいてい文章を不得手とする。
記事表現するためには「書き屋」がいなければならない。
政治記者にも特ダネ派と評論家タイプがいるということだ。
双方を兼ね備える記者というのはなかなかいない。
後藤は材料が取れ、かつ書ける数少ない記者だったとされる。
・後藤も記者として走り回っていた、はずである。
ポケベルもなければ携帯電話もないから、今と違って新聞記者の自由度は高い。
しかしそれにしても後藤の行方不明度も高かった。
政治部長が「ゴッちゃん呼んでくれ」
と言う。
捜すけれどつかまらない。
「まるで潜水艦」と言われた。
・若手記者は後藤が、
「どこの誰から、どんな方法で、こんなすごい情報をとることができるのか、
不思議でならなかった」と言っている。
・後藤が、どこの誰と親しかったかは、永遠の「謎」として残っている。
そもそも主たる取材相手たる政治家との親密度からして伝説的であった。
・「政治記者が政治家の家に押しかけるとき、普通は応接間で待つものだが、
時にその家の主人と親しいと自負する記者は茶の間の方へもぐり込む。
これを『お茶の間組』と称して得意になっている記者もいるが、
ある夜、その『お茶の間組』の記者の前に、
平然と佐藤栄作の寝室から現れ出た記者がいた。
後藤基夫である。
以来、『寝室組』という言葉が生まれた」
・後藤の「比類なき情報網」。
「ありゃ、遊び人だよ」と言う人がいた。
麻雀、オイチョカブ、ポーカーにルーレット、そして競馬と賭け事は何でもござれ。
お酒が大好きで美食家。
「それに、女性にももてたからなあ」と、
その人は後藤のことを心底懐かしがるのだった。
「ほんとにゴッちゃんは、いつどこで取材してたのかねえ」
・言葉がごく短いのは後藤の特徴だった。
記者クラブで麻雀に興じている。
そこへ電話がかかってくる。
「うん」「ああ」「そんなことか」
それで用が足りるらしい。
・さらに後藤は、要人の集う会員制サロンにも出入り自由であった。
大情報通で知られる女主人に「ゴッちゃん、ゴッちゃん」と、
ひいきにされることたいへんなものがあったという。
その交友範囲は、政治家、財界人、官僚ばかりではなく、学者、文芸家、芸能人、
さらに「皇族からヤクザまで、きわめて広く、しかも、
そのほとんどの人々と深い信頼で結ばれていた」
と感嘆するのは後輩記者。
・「どうして、そんなにいろいろ仲がいいんですか」
とある日聞いた記者がいた。
「長いんだよ、長いだけだよ」
とだけ後藤は答えた。
別の日また聞かれた後藤は珍しく言葉を継いで、
「誰に食い込むか、・・・大変なんだよ。必死に考えるんだよ」
と言った。
・後藤基夫が必死に「情報」を手に入れようとしたのは「好奇心」からではなかったか、
と後輩の石川はいう。
それは駆け出しの頃から一貫した後藤の行動原理であって、
「ただ知りたいから、知っておきたいから知る」
ということであったろうというのである。
・後藤は敵対する政治家の双方と仲がよかったという話が驚異として伝わるが、
これは後藤がいわゆる派閥記者と違って、
自分の知った情報を別の情報と交換取引しなかったからである。
・酒が好きで、後藤は連日午前さまであった。
いつも連れには払わせない。
その金離れのよさに、ゴッちゃんにはきっとすごい遺産があったのだという人がいた。
息子の伸一によると、
没後税吏が「隠し財産があるだろう」と幾度も来て、
「母が閉口していました」という。
60万円の普通預金通帳が残っていたきりだったそうである。
※コメント
新聞記者の人たちには、情報取りのコツを学べる。
どうやって相手に食い込み、情報を教えてもらい、表現するか。
どんな仕事にも応用できる。
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