◆ケント・カルダー『米軍再編の政治学:駐留米軍と海外基地のゆくえ』を読み解く
※要旨
・本書を書こうと思い立ったのは、駐日大使特別補佐官をつとめたことがきっかけだった。
私はウェルター・モンデール、トーマス・フォーリー、ハワード・ベイカーの歴代大使に仕え、
主だった在日米軍基地すべてと在韓米軍基地の大半を視察して、
さまざまな分野の将校や外交官と話し合った。
・基地の影響を受ける地元社会も訪れ、
いろいろな政治信条を抱く思慮深い日本人と知り合った。
ことに沖縄には16回行った。
・基地は国際問題で重要な役割を果たしている。
侵略を抑止し、同盟関係を強化し、勢力均衡をめぐる紛争を防ぐ。
他の追随を許さない効率的なグローバル補給ネットワークを提供し、
資源の円滑な移動を確実にする。
・最近では、テロリズムとの戦いに役立っている。
海外基地は、これまでの時代なら帝国と呼ばれていたかもしれないアメリカのグローバリズムを、
物理的に支えている。
・とはいえ、このグローバルな護り手は、攻撃に脆く、批判の対象になることもままある。
いくらアメリカの腕力が原理上も地政学上も絶大無二であっても、
過去と現在の他の国の軍事力すべてと同じように、
受入国の国内事情と取り組まなければならず、
本国の不満に対処する必要があることも多い。
・ロシア、イギリス、フランスといった大軍事勢力は、経済と政治の圧力のもとで、
現在ではグローバルな基地ネットワークをほとんど失っている。
・帝国の副産物である駐屯地。
どこの国土であろうと、外国の領土にある軍事基地は、
2000年の昔から古い歴史を背負っている。
たとえば、ギリシャの歴史家トゥキュディデスは、
紀元前5世紀のペロポネソス戦争の際に起きた基地問題に触れている。
・ペルシアもローマも、帝国の力を維持するのに、
戦略拠点への陸路を支配する駐屯地を重視していたし、
ベネツィア、ポルトガル、スペイン、オランダなどの海洋帝国も、
そういった重要拠点を手に入れるために猛然と戦った。
・産業革命が起こり、汽船が帆船に取って代わると、
諸大国はいっそう基地に依存するようになった。
やはり帝国の維持が目的で、海軍艦隊に石炭を補給するために必要不可欠だった。
イギリスの支配による世界平和の要は、なっといっても海外基地であり、
大英帝国はこれを最優先した。
・海に生きる島国であるイギリスは、1890年には世界の船舶の半分以上を有していた。
はるかに離れたところの植民地を支配し、帝国の領土を維持するために、
なんとしても海を支配しなければならなかった。
ポーツマスはいうまでもなく、ジブラルタル、喜望峰のサイモンズタウン、
スエズ、アデン、シンガポール、ヘルゴランド、香港などの海軍基地は、
帝国の支配に不可欠だった。
・こうした基地は、敵国の艦隊の動きをひそかに制する防衛拠点であるばかりでなく、
世界各地へ延々と伸びているイギリスの兵站と通信ネットワークを維持する、
重要な役割を果たしていた。
・全世界を結ぶこのネットワークが、大きな財政的負担であったことは間違いない。
とはいえ、戦略的要衝に戦闘力を集中し、
同盟国や植民地の政治経済資源を利用し、
それを梃子に国力を強化するのに、海外基地は役立った。
・大英帝国の海外基地重視政策の最大の遺産は、
かつての植民地に不安定ながら一定の方向性を持たせるという、
戦略的な遺風を残した。
イギリスの衰退を受けて世界各地に進駐したアメリカの大兵力を支えたのは、
そうした伝統とインフラだった。
ロシア、ドイツ、日本その他の強国とは違い、
アメリカにはイギリスの基地組織を基盤にできるという独自の強みがあった。
※コメント
国際政治と海外基地は密接に関係している。
重要なテーマだからこそ、大きな問題となり議論される。
このテーマを注目したい。
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