◆渡部昇一『講談・英語の歴史』を読み解く


※要旨


・人文学の真髄は座談、いや雑談ができることにあるのではないか。


・教壇に立つようになった教え子たちには、
「学生と座談するだけの知識を持て」とすすめてきている。


・英語には波瀾万丈ともいえる歴史がある。
イギリス人の祖先であるアングル人にしてもサクソン人にしても、
北ドイツの小さな部族であり、英語はその言葉だった。
それが今や国際語になった。
貧乏人の子どもがビル・ゲイツになったようなものであり、
長い時間を経て成り上がってきたわけだ。


・イギリス人のことを「アングロ・サクソン」としばしばいう。
「アングル」はユトランド半島の真ん中あたりにあるアンゲルンという地方から来た人々、
「サクソン」はドイツのザクセン地方から来た人々を指す。


・オールド・イングリッシュ(古英語)はどんな英語なのか。
端的にいうと、今のドイツ語の一つの方言と考えるのが一番近いだろう。


・オールド・イングリッシュの特徴として特筆すべきは、
「外来語」がきわめて少ないことである。
これをもって「オールド・イングリッシュは英語の大和言葉だ」と私はいうことにしているが、
『古事記』や『万葉集』のように外来語がほとんどないものと理解すればいいだろう。


・イギリスの歴史で最大の事件といわれるのが1066年のノーマン・コンクエストである。
ノーマン・コンクエストとは何であったかというと、
ゲルマン民族の大移動の最後の移動だった。


・自国の法律は自国の言葉、つまり英語で書くことに正式に決定するまで、
ノーマン・コンクエスト以来、
実に665年もかかったということは英語や英国の歴史を考えるうえに重要である。


・チョーサーは「英文学の汚れなき泉」などと讃えられる大詩人で、
英文学はここから始まるという人も大勢いる。
彼は『カンタベリー物語』の作者だ。


・近代英語の大きな山であるシェークスピアの英語の特徴は何か。
ピュアリズムによって国語意識が強いけれども、ヴォキャブラリーがきわめて豊富であり、
ヒューマニズムの色彩も濃い。
全体としていえば、ヒューマニズムの流れにあるといってもいい。


・イギリス最初の首相になったロバート・ウォルポールは田舎の紳士だったけれども、
常識があり、ヨーロッパの戦争には関わらないという方針を堅持して、完全なる平和を保った。


・司教の社会的地位は、日本では考えられないくらい高い。
それに相当するものは日本にはないが、大きな芸事の家元のような力があるような気がする。
今のドイツにおいても司教は県知事をしのぐ力があり、しかも社会的な地位はもっと高い。


・イギリスの場合はカンタベリー大司教が宮廷席次の第1位、
第2位がヨークの大司教、その次に首相がくる。


・北ドイツのゲルマン人の小部族が、おそらくはアッティラのフン族に追っ払われてイギリスへ渡った。
そのドイツ人の言葉が、歴史の流れのなかでいつの間にか世界の共通語になった。
以上が英語の物語のおおまかな流れである。


・そもそも国語とは、理屈を越えた環境である。
人間は空虚なところに生まれるのではなく、国語という環境の中に生まれてくる。


・国語教育の第一は大和言葉の文学を子供に教えることである。
大和言葉は母の言葉であり、無学の母親も知っているヴォキャブラリーだけから成り立っている。


・第二に、外来語のヴォキャブラリーを増やすことが必要である。
これは一見矛盾しているように見えるが、そうではない。
たとえると、大和言葉はヴァイオリンなどの弦楽器であり、嫋々として響く。
漢語はピアノのように切れがいい。
両方入ったほうが表現を豊かにするのである。
いわば二重奏である。
それにヨーロッパ系のカタカナ語が入って三重奏になってもさらによい。
とりわけ知的な言葉は外来語のほうがいい。


・石井勲先生が漢字教育で実験したところ、幼稚園児でも漢字をすぐ覚え、
少し訓練すれば漢詩が読めるという結果が出ている。


・実は、子供にとってはむしろ漢字のほうが易しいのだ。
漢字がいかに覚えやすいかというと、絵が覚えやすいのと同じである。
ひらがなで「うま」を読めないうち、「馬」という字を一回教えれば覚える。
たとえ書けなくても、読むことはできるようになる。
子供の時やったほうが漢字の感覚がつく。


・漢字にふりがなをつけて、大量の言葉を子供に教えてもらいたい。
漢字は早くからやればきわめて簡単に覚えるものである。


・テキストを限定する。
お母さんが大和言葉を話す。
学校では大和言葉の和歌や俳句をやる。
それから漢字はふりがな付きのものでどんどん読ませて、たくさん覚えさせる。
候補としては、『百人一首』『平家物語』『奥の細道』くらいに絞る。


・かつてヨーロッパ人が古典に秀でたり、日本人も漢文ができた理由は、
初歩段階で読むべきものが決まっていたからである。
漢文なら『四書』(論語、孟子、大学、中庸)だけだった。


・ドイツでも小ラテン試験に出るのは、タキトゥスの『ゲルマニア』かシーザーの『ガリア戦記』だけである。
準備するほうはそれをやっていればいい。
その代わり、徹底的にやらなければいけない。


・英語においても、読む内容があるほうがいい。
「読書はフルな人間、つまり内容のある人間を作る。
カンヴァセーションはウィットのある人間、機転のきく人間を作る。
書くことは正確な人間を作る」
とフランシス・ベーコンはいったが、そのとおりである。


・ヴォキャブラリーで社会的地位がわかる。


・アメリカではヴォキャブラリーが重要になってくる。
アメリカの本で目につくのは『ヴォキャブラリー・ビルディング』という本だ。
そのかなでもノーマン・ルイスが書いた本が一番普及していると思う。
そこには次のような趣旨のことが書いてある。


・「社員と課長はどこが違う。
課長のほうがたくさん単語を知っている。
課長と部長が一番、どこが違うか。
部長のほうがたくさんの単語を知っている。
部長と重役はどこが違うか。
重役のほうがたくさんの単語を知っている。
重役と社長はどこが違うか。
社長のほうがたくさんの単語をよく知っている。
その場合、社長が学校教育を受けているかどうかはほとんど関係ない。
ヴォキャブラリーで社会的地位がわかる」(ノーマン・ルイス)


・ルイスは、↑ここまで言い切っている。
実際、アメリカではヴォキャブラリー・テストが多いし、
ヴォキャブラリー・ビルディングをやるかやらないかが、
アメリカ人たちにとって出世の要になっている。


・発音は英語圏で暮らして、直す努力をしていれば相当程度きれいになる。
大切なのはやはり「英文法」と「豊かなヴォキャブラリー」である。


※コメント
日本語でもビジネスにおける上役の人々は、会計の言語、法律の言語、経営の言語に詳しい。
その前提でさまざまなアイディアや最新情報をアップデートする必要がある。
たくさん本を読み、会話して、言葉を豊かにしたい。



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