◆太田文雄『日本の存亡は「孫子」にあり』を読み解く


太田氏は海上自衛隊幹部出身。
旧・防衛庁情報本部長などを歴任。
国際経験が豊かで、情報や安全保障政策に詳しい。


※要旨


・本書を要約すれば、『孫子』は古今東西一級の兵学書であり、
それゆえ今日でも多くの国家や軍の指導者が愛読していると言える。
『孫子』の素晴らしさは、まず人生の根本原則に素直に随順していこうとする思考法であり、
同時に無限の創造を主動的に求めて現代に生き続けていることである。


・将来の我が国の安全保障を考察するとき、最も懸念されるのが中国である。
この中国の軍事戦略を学ぶ際に『孫子の兵法』抜きには語れない。


・中国共産党の動向を見ていると、『孫子の兵法』に則って、
グランド・ストラテジーを遂行していると思わされることが幾度となくある。


・米国のランド研究所は、文書のなかで、
中国人民解放軍が米国の弱点を、情報やC4ISR、ネットワークに頼りすぎていること、
複雑な後方支援作戦、帝国的な伸延、人員被害に敏感なこと、
同盟国の前方展開基地に頼りすぎていることなどと分析し、
その米国の弱点を衝くべく努力を傾注しているとしている。


・現代の中国戦略は『孫子』に基づいており、
中国を安全保障上の最大の懸念としている日本は、
『孫子』の何たるかを学び、その対策を構築していく必要がある。


・終戦時の総理大臣を務めた鈴木貫太郎の自伝によれば、
日清・日露戦争の頃までは本家である中国よりも寧ろ日本のほうに、
『孫子』が定着していたようである。
彼によれば、
「日清戦争後、欧米の東洋兵学研究が盛んとなり、
逆に日本人が『孫子の兵法』を顧みなくなった」
ということである。


・日清・日露戦争における指導者の戦略・情報眼はすばらしかったが、
その背景に、山鹿素行を師と仰ぐ吉田松陰や、佐久間象山といった幕末の兵学者が、
『孫子の兵法』を明治維新の多くの指導者たちに教えていたという事実が、
あったことを忘れてはなるまい。


・剣道でも心の冷静さを失うと正しい技が出ず、
また「初太刀は面を取ってやろう」「次は胴を狙ってやろう」
と一つの打突部位だけに拘泥することを「止心」と言って昔から戒めている。


・ひとつのことに拘泥しないバランスのとれた心の動きを孫子は水に例え、
剣道でも「明鏡止水」(くもりのない鏡と波立たない静かな水)とか、
「平常心」として手拭いにしたため教え諭されてきた。


・日本のインテリジェンス組織の人員および予算規模は、
主要国のそれに比べて一桁少ない。


・しかし、縦深性を持たない国家は一度攻め込まれたら国家がなくなってしまうので、
インテリジェンスにかける人員・予算規模は並大抵ではない。
それはイスラエル、シンガポール、台湾などの実態をみればすぐわかる。


・中国の実質的な最高実力者であるのは、中央軍事委員会主席である。
共産党におけるランクからいえば、解放軍のほうが外交部よりも上に位置し発言力も強い。
中央軍事委員会のメンバーは、習近平を除いた10名はすべて現役上将で、
『孫子』を諳んじているほど徹底的に叩き込まれている『孫子』の体現者である。


・日本はこうした人たちのメンタリティを理解し対策を取らなければ、
国家を存続させていくことはできない。


※コメント
孫子は漢文なので敬遠しがちだが、
あらためてその大切さを理解した。
もう一度、何回も読み返して、その真髄に迫りたい。


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