◆小松正之『なぜ日本にはリーダーがいなくなったのか』を読み解く


小松氏は、元・農林水産官僚。
水産畑に長く携わり、クジラやマグロなどに関する厳しい国際交渉で辣腕を発揮した。


※要旨


・変革をもたらすリーダーに求められる4つのステップ。


1.将来の見通しと展望を示す方向づけ。

2.将来への具体的なビジョンを言葉と行為により伝える。

3.政治的・官僚的・人的および予算的困難を克服するための人々の動機付け。

4.実際にビジョンや計画を実行に移し、将来の社会を変革すること。


・ビジョンを共有するフォロワーをつくる。


・リーダーシップに必要なものは、専門性だ。
他人より特定分野に秀でているとその力は発揮しやすい。
そのため専門的な知識を深く習得し、さらに現場の経験に裏付けられていることが好ましい。


・専門性と同時に求められるのは全体を見通す大局観だ。
このような力を得るには、知識の幅を広げることだ。
さまざまな分野を知ることで、自分の専門分野がどの位置にあるかが明確になる。


・そのためには読書でも、『論語』『易経』、唐の太宗の政治を描いた『貞観政要』、
ソクラテスやプラトンの時代から現代までの古今東西の哲学、思想書、
歴史、文学、科学など、幅広いジャンルの本を読む必要がある。


・私の場合は、英語力、諸外国における資源管理の制度、海洋法、文化人類学、
食文化、歴史・地方史、数学、統計学、分子生物学、経営学、組織論など、
ありとあらゆるものを独学で学ばなければならなかった。
今でも勉強は続いており、諸外国のリーダーシップ論、IT関係の技術論、
経済・経営書と放射性物質と食べ物に及ぶ。


・ビジョンを伝えるためのコミュニケーション力をつける。


・スティーブ・ジョブスは特定分野の技術的専門家というわけではないが、
映画、音楽、ソフト、ハード、デザインのすべてに精通し、
それらの知識を総合的にたばねた。
彼は第一線の技術者、科学者を集め、彼らと直接な対話を繰り返し、
自らの信じる方向に引っぱっていった。


・一国の命運を預かったリーダーたちとは比肩すべくもないが、
私は農林水産省時代、海外の政府関係者やメディアから、
「タフ・ネギシエーター」と呼ばれてきた。
戦後の混乱期から政府内で受け継がれてきた交渉人の系譜と、
イェール大学で培われたアングロサクソン社会での切磋琢磨、
そして国際漁業の盛んな土地柄であった陸前高田市広田町で育ったことが要因だ。


・戦後の食糧難の時代から続けられてきた国際的な漁業交渉は、
日本経済全体の発展に大きく貢献した。
このような重大な責務を負ってきた水産庁は、ある意味、
外務省や通産省(当時)以上に交渉に対する取り組みが進んでおり、
日本の省庁では稀な国際官庁だった。


・そのような環境の中で、私は国際交渉の前線に出され、
発言は論理とデータに基づいて客観的、合理的におこなうという姿勢を先輩から叩き込まれ、
国際交渉のイロハを学んだのである。


・交渉は対立が当たり前。
自らの立場を明確にし、迎合はしない。


・交渉にあたってまず欠かせないのは、
交渉の目的と内容を明確にすることだ。
何を交渉するのか、その中身は何なのか、
そして中長期的な目的と目標、短期的なものをわけて考えることも重要だ。


・組織のポテンシャル上昇は対話から。
交渉において、交渉相手だけをみていてはいけない。
対外交渉にあたるためには、内堀を固め、
自分の足場を確かなものにすることを忘れてはいけない。
単独プレーにならないように、公的な立場を形成することが不可欠である。


・まず自らの考えや提案を職場の同僚や直属の上司に示し、
同意を得て味方を増やす。
交渉の目的と目標、それを達成するための具体的な方法や手順の検討をおこない、
身内での合意を形成するのだ。


・人より早く発言し影響力を高める。
では、どうすれば会議の場で主導権を握ることができるのだろうか。
それには何よりもまず、他人よりなるべく早く内容のある発言をすることだ。


・沈黙は悪、反論はすぐに。
交渉は、言葉の応酬である。
国際会議などでは、一方的な発言やゴリ押し、感情的な反発は日常茶飯事、
なかには完全な言いがかりで議論を混乱させる人もいる。


・しかし、反論をタイミングよく繰り出すためには、
周到な準備と長年にわたる鍛錬が必要なのである。
一朝一夕にはできないのである。


・情報を取捨選択し、主張を単純化する。


・私は農林水産省に入り、いつかは日米交渉や日ソ交渉に携わりたいと思っていた。
入省一年目から同期生がデートしたり、飲食を楽しんでいる間に、
私は給料のほとんど大半を費やして語学学校に朝晩通い、
英語とロシア語を本格的に勉強した。
他人と同じことをしていてはダメだと真剣に考え、アメリカに留学することが夢だった。


・その甲斐あって、3年目にイェール大学の経営大学院に留学することができた。
そして二年間、英語との格闘の日々を送った。
平日は、大学院の授業を受け、夜は予習。
週末も土日は終日予習に明け暮れた。
新婚まもなく家内との会話の時間が惜しいくらいだった。
そしてMBAを取得。
2年間の留学中は寝ても覚めても英語漬けの毎日で、よく生き残ったと思う。
帰国後、トップの抜擢で、念願の日米交渉を担当することになった。


・交渉相手を自分の筋書きにのせる。


・交渉を主導するためには会議の議長になる。
国際交渉における留意点をいろいろ述べてきたが、
公の会議の場で交渉を主導するための秘策がもうひとつある。
それは会議の議長を務めることである。


・情報発信を怠ると、不利な情報が出回る。


※コメント
国際漁業交渉という激しい現場を渡り歩いてきた小松氏の言葉には説得力がある。
ほかにも色々、水産や国際交渉に関する本を出されているようなので、研究したい。


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